怖い話朱い塚-あかいつか-

見つめる老人

投稿者:こけさん




これは、私が小学生のころ体験した

恐ろしいというよりもなんだか悲しいお話です。

それまで同居していた母方の祖母が亡くなって

葬儀も終わり、火葬場へついていきました。

その日は火葬される方も少なかったらしく、

それほど人が多くありませんでした。

私達は、身近な人を無くした悲しみの中で

祖母と最後のお別れをして、あとは収骨の準備が整うまでの

時間を過ごすため待合室へ向かいました。

途中、火葬のため運転中の炉の一つが妙に気にかったのですが、

足早に通り過ぎました。

待ち時間の間、じ〜と落ち着くことができなかった私は

うろうろと歩き回っていました。

すると、待合室の隅のほうで、まったく人のいない場所に

おじいさんが立っていて、私の母たちのほうを見つめていました。

その老人は、そばにいた私の存在に

気が付いたような感じでしたが、

たださみしげに、うらやましげに・・・

なんだか悲しげな表情で母たちを見つめていました。

その時私は、いま火葬の最中の人だと何となく判ってしまいましたが、

決して恐怖を感じることも無く寂しいという感情だけが伝わってきました。

そして、アンウンスが流れ、収骨室に向かっていると、

ちょうど運ばれていく遺骨がありました。

それと、その後を当たり前のように続いてゆく母たちの姿が・・・。

でも、明らかに祖母が火葬されていた場所と違ったので、

「母に違う人だよ」と告げ、その遺骨のために

準備された収骨室を覗くと遺影がありました。

その遺影を良く見てみると、先ほどの老人その人でした。

そして、収骨室には市の職員と思われる方2・3人しかいませんでした。

多分あの老人は、身内のいない方だと思います。

そこで、祖母のため大勢で参列していた私たちをみて、

「こういう人間もいたのだ」と知ってもらいたかったのだろうと思います。

余談ですが、あの火葬場で三度ほど身内との別れを体験していますが、

何の因果か三度とも同じ場所(番号)の炉を使っていました。

あんなにいっぱいある炉の中で、どうしていつもいつも、同じ炉を・・・。




   



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