怖い話朱い塚-あかいつか-

霊聴

投稿者:祐紀さん




私の大学時代の友人は、霊の姿こそ見ませんが

いわゆる霊の声が聞こえてしまう体質のようなんです。

たとえばお盆に入ると、深夜に遠くから無数の異界人たちが

お経を唱えながら近づいてくるのが聞こえはじめ、

まんじりともできず布団の中で息をひそめて様子をうかがっていると、

次第にお経を唱える声が大きくなると同時にわらわらと姿のない

異界人が彼女の部屋の欄間のあたりを通り抜けて行くというようなことが

毎年お決まりのようになっていたり....

そのつど彼女は、今年も仏さん達それぞれ

懐かしい家に帰ってきたんやなぁと思うことにしていたとか....。

またある時は、真夜中だというのにすぐ裏にある教会から

大声ではしゃぎまわる子供たちの気配に目を覚まし、

疲れていたこともあって頭にきた彼女は教会に面している窓を開けて

「今、何時や思ってるの! 子供は早く帰って寝る時間やろ!!」と

叫んで外を見ると、子供の姿などそこにはなく、

シーンと静まりかえった広場と教会が見えるだけ....。? 

と思いながら窓を閉めて時計をみると午前二時をまわっている!

異界の子供たちはお昼間に遊べないから仕方ないか....。

そう思いながら布団にもぐりこんだ彼女の耳に、

またさっきの子供たちの遊ぶ声が聞こえはじめて.... 

結局、朝方近くまではしゃぐ声が続いていたために

彼女が寝不足になってしまったのは言うまでもありません。


そんな彼女がいちばん怖くて忘れることのできない体験があります。

それは今から十年以上も前の出来事ですが、

彼女が失恋のショックから発作的に自殺未遂をおこした時のことです。

人通りの少ない堤防に車をとめて大量の薬を飲み、排ガス自殺を図ったのですが、

幸い夜釣りに来ていた男性によって救われたのでした。

早期発見だったために命をとりとめた彼女でしたが、

また発作的に自殺を図る可能性があるという医師の判断で、

その夜は入院することに....。 

彼女が付き添いの母親と眠ることになったのは、

ICUと呼ばれる部屋だったそうです。

たまたま緊急を要する患者がいなかったためか、

彼女たち親娘だけしかいませんでした。 

母親が眠ってしまったあとも彼女はとても眠れる心境ではなく、

目を閉じていろいろなことを思いおこしていたそうです。 

どれくらいたった頃でしょうか、突然部屋の中でオルゴールが鳴り始め、

その音色にまじって幼い女の子とその子の母親と思われる人が嬉しそうに

会話を交わす声が聞こえてきたのでした。 

時々、フフフッと笑いながら「またお母さんとずっと一緒にいられるね...。」

「そうよ、よかったね...。」

そんな会話を繰り返ししていて、そのあいだ中

ずっとオルゴールが鳴り続けていたそうです。 

彼女は不思議と怖いという感情はなく、むしろ

「やっと親娘一緒にいられるようになれてよかったね...。」

そんな穏やかな気持ちが強く感じられたそうです。

眠れない朝を迎えた彼女に母親が

「ゆうべ、部屋の中でオルゴールの音がうるさくて

なかなか寝つけんかったよ。」と話したことで、

彼女はあらためて確かに異界人が部屋にいたのだと確信したとか....。


   



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