怖い話朱い塚-あかいつか-

怨霊地帯 呪いの心霊スポット [DVD]

幽霊電車

投稿者:松沢直樹さん


はじめまして

細々と作家業を営んでおります松沢直樹と申します。

以前からおじゃまさせていただいておりましたが、

今日は投稿させていただきたいと思います。

もともとある程度の霊感があるせいか、

取材などでたまに霊現象にでくわすことがありますので、

そういう現象に出くわしても、あまり気にも留めないのですが、

一つだけ未だに理解できない現象が自分の記憶の中でくすぶっております。

さて、僕が未だに理解できない現象というのは、

タイトルにもありますように、幽霊電車と出くわした記憶です。

あれは僕が高校を出て、車の免許を取った頃ですから、

早い物で18年近くも前のことになります。

大学を目指す気力もなく、かといって就職する気にもなれず、

当時の僕は高校の担任に勧められた、

とある専門学校に通っていました。

学校は博多にあったため、K市の自宅からは国鉄

(当時JRは国鉄という名称で国が経営していた)で

1時間半ほどをかけて通っていたのですが、たまたま資格試験の関係で、

車を運転して博多の外れにある試験会場に向かいました。

試験は夕方で終わったのですが、解放感に駆られた

友人達と海に出かけたりして深夜まで遊び、

全員を自宅まで送り届けると、時計は深夜の二時を回っていました。

「じゃあ、また明日」

他愛もない挨拶を友人と交わして、自宅へ車を向けた時、

信号待ちで腕時計を見ると、

深夜の二時半を指していたのを覚えています。

「さて、どう帰るかな」

ちょうど、そこから自宅へ戻るには、K市の中に挟まれている

N市の駅の方へ出て、国鉄の線路沿いの道を通る道と、

川の土手の上にできた道を通る二通りの道があります。

K市は大都市ではありましたが、深夜になると

全く人通りが無くなるので、僕は少し遠回りになるものの、

明かりの多い国鉄沿いの道を無意識に選んでいました。

N市にある、国鉄のN駅からは4キロほどの支線が出ており、

線路沿いにある程度の住宅もあります。

少し遠回りになるけど、人の気配が感じられる方が、

気も楽だと思った僕の選択は間違いではありませんでした。

順調に道路脇に立っている水銀灯の明かりと、

カーラジオの深夜放送に助けられたこともあったのでしょう。

N駅を越え、自宅の方向へ向かう国鉄の支線沿いの道路に入った時、

僕はすっかり気分がほぐれ、

深夜のドライブを楽しむ余裕すらでてきていました。

そんな気分に押され、ついアクセルを踏み込んだ瞬間でした。

背後から激しい光で照らされたのです。

「しまった! ねずみ取りか?」

友人から深夜に速度違反の取り締まりをやっていると聞いていたので、

おそらくパトカーが後ろからやってきたのだろうと思いました。

慌ててブレーキを踏んで減速したのですが、一向にこちらにやってくる気配がありません。

バックミラーでそっと後ろを見てみると、

まぶしい光は道路の上ではなく、線路の上で光っています。

「なんだ。電車が来たのか」

パトカーの取り締まりに引っかかったのではなくて、ほっと胸をなで下ろし、

僕はまたアクセルに足をかけました。

まぶしい光はバックミラーの中で速度を増しながらこちらへ移動し、

近づいてきています。

それにしたがって、ディーゼル車独特のエンジン音

(その線は電化されていなかったので、ディーゼル車しか走っていなかった)が

近づいてきました。

聞き慣れた音に胸をなで下ろしながら、ステアリングを握りなおした瞬間、

今度は妙な不安が胸の中で膨らんで来ました。

そう、こんな深夜に電車が動いているわけがないのです。

しかもすっかり忘れていましたが、

この線は既に廃線になっていて、二度とお客さんを

乗せて電車が走ることが無い線です。

「いや、試験走行かなんかで、新しい電車をこの時間に走らせて

テストしょうとたい。そうに決まっとる」

パニックになりそうな自分をなだめるために、必死にひねり出した理屈でした。

ステアリングを握る手に汗がじっとりとにじんでいるだけでなく

震えが自分を襲っているのがその時、初めて分かりました。

たしかに廃線になったとはいえ、線路は残っていますし、

N駅ともつながったままですすから

物理的に電車を走らせることは可能でしょう。

しかし、線路脇に住宅が建つ路線で、騒音の多いディーゼル車を

深夜に走らせたりするでしょうか??

どう考えても理屈に合いません。

そんな考えをよそに、道路と平行に走っている電車は、

スピードを上げて追ってきます。

自分の車とほぼ変わらないスピードだったのか、

追い越されるのは非常にゆっくりと感じたのですが、

あかあかと車内灯で照らされた2両編成の電車の中はまったくの無人でした。

それどころか、運転台に人が座っている様子もありませんでした。

ただならぬ雰囲気を感じて、僕はすっかり怖じ気づいてしまい、

たまたま出くわした脇道に逃げ込んで、

そのまま裏道を迷走して家へ帰りました。

昨日の出来事は夢だったのか? 翌日、何度もそう思いました。

しかしながら、あんな時間に電車が走っているわけはありませんし、

乗客を一人も乗せていない電車が車内灯を明々とつけて

走っているなんて、どう考えてもおかしいです。

運転しながらでしたから、はっきり確認はできませんでしたが、

運転士らしき人も乗っていなかったようです。

それに、僕がいたたまれなくなって脇道に逃げた地点は、

最終駅にほど近い地点なので、少なくとも電車は相当減速していないと、

安全に停止できず、事故を起こしてしまうはずです。

思いあまって、翌日、電車で学校へ行った帰り、

途中下車して駅員さんに尋ねてみましたが、

一笑に付されるだけでした。

それからしばらくの間、僕と同じように

あの電車を目撃した人がいないか調べてみましたが、

とうとう一人も目撃者を見つけることはできませんでした。

あの電車はいったいなんだったのか、今でも不思議でなりません


   



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