怖い話朱い塚-あかいつか-

ウィスキー

投稿者:T.Rさん




私、難病で入院しておりました。

そのときの話です。

入院初日、友人が遊びに来ました。

酒好きの彼は、人が十二指腸潰瘍で酒を飲めないことを知りつつ、

ポケットサイズのウイスキーを1本置いていきました。

ベッドの横の小物入れにウイスキーを放り込んだ私は、

そのまま寝てしまいました。

その夜、なんとなく気配で目を覚ました私は、

思わず凍りつくようなものを見てしまいました。

カーテンがしまっているにも関わらず、

私のベッド脇にはズラーッと人が並んでいるのです。

そして、小物入れの引き出しは開けられ、

そこに入っているウイスキーをラッパ飲みしていくのです。

一口飲むと、人は入れ替わり、

閉まっているカーテンを揺らさずに出て行きます。

「付き合っていられない」

そう思った私は、恐怖を無理やり押さえつけ、眠りにつきました。

寝入るのに、かなり苦労を要したのは確かですが...。

翌日、小物入れの引き出しは閉まっており、

夢に違いない、と私は確信しておりました。

例の友人が見舞いに訪れるまでの、短い間でしかなかったのですが。

友人は、「飲んだか?」とかる〜く声をかけ、

人の小物入れを無断で開けます。

「何だ、飲んでるじゃないか。空っぽだぞ」

その言葉に、私の背筋は凍りつきました。

「あれ?」

私の様子に気づかずに、友人は不思議そうな声を上げます。

「お前、これどうやって飲んだ?」

青くなった私の顔を見て、彼も何かに気づいた様子でした。

「このポケット壜、口金が切れてないんだけど...」



   



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