朱い塚-あかいつか-

我が子を探しにきた母親

投稿者:まんちゃんさん




私の亡父は産婦人科医でした。

この話しは父が開業前に大病院の医長をしていた時の話です。

その日は朝方から出産のラッシュが続き、スタッフは大忙しで、

夜の10時頃ようやくくつろいでいると、

外科から応援要請が入ったそうです。

「救急車で交通事故の負傷者2名搬入、

内1人は妊婦、意識混濁で微脈!!」

父は当直ナース2名を連れて「救急処置室」に向かったそうです。

処置室に入るとそこに男女2名の患者さんが横たわっていて、

男性はすでに死亡が確認されていました。

女性の方は大きなお腹を抱え「子供を助けて」と

途切れるような声で苦しんでいたそうです。

父は外科のドクターから

「女性の方も内蔵破裂で時間の問題です。

後はお腹の胎児が助かるかどうか・・・。」

と聞かされ女性の元に行き、

「大丈夫。子供さん大丈夫だから、安心しなさい。

お母さんも頑張らないといけないよ。」

と励ますと、女性は

「よろしくお願いします。」

と安心した顔で微笑み、意識を失ったそうです。

死亡した男性はこの女性の夫で、

2人の所持品から親族を探したそうですが、

すぐには見つからず、やむを得ず緊急手術に入ったそうです。

父は帝王切開で無事男の子を取り上げ、

この子の母親は我が子を抱くこと無く2時間後に死亡したそうです。

結局死亡した夫婦には他に身内がおらず、

生まれたこの子は未熟児でしたが、

無事回復して施設に引き取られて行ったそうです。

それから2週間後・・・・・

当直だった父は医局で仮眠をとっていると女性の声で目を覚ましました。

そしたら、すぐ横にあの亡くなった母親がたっていたそうです。

慌てた父にその母親は言いました。

「私の子供を知りませんか?どこにもいないんです。」と・・・。

父は、

「○○にいるから安心しなさい。」

と言いました、するとすう〜と消えたそうです。

後で父は気になり、子供の引き取られた施設に出向き園長にこの事を話しました。

すると園長はこう言いました

「最近この母親が乳児室に出てきて、大騒ぎなんです。」と・・・。

父はこの園長とこの夫婦が眠っているお寺に行き供養したところ、

それから母親は現れなくなったそうです。

私は中一の時この話を父から聞き、涙が出て止まりませんでした。

あの子は今どうしているんでしょうか・・・。

今でも時々気になります


   



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