朱い塚-あかいつか-

霊の御礼

投稿者:末句栗鼠主水さん



私が中学生だった頃のある日、 家族で夜に見る夢の話をしていました。

母が不思議な夢の話をしたのです。

松の林の中に、仏壇が置かれていて、 松の枝に覆われていました。

なんとも、むさくるしそうなので、 植木鋏で、枝を落したのですが、見ている間に、

枝が伸び再び覆われてしまいます。

やれやれと、思いながらも、 次々に枝を苅り続け、へとへとになったと言います。

しかし遂に、松も根負けしたのか、 伸びるのがやみ、同時に幹が消え、次いで林もなくなり、

虚空に仏壇だけが残って夢から醒めたと言う話です。

仏壇の世話をしてないのが、 気に掛かって夢になったと言うなら、まあ、ありそうな話でしょう。

しかし、そのころ家には仏壇がなかったのです。

話は続きます。

数日して、夢枕に、和服をきた中年の婦人が現れ、

「過日は、大変お骨折りいただきありがとうございました。

おかげで、心地よく過ごせるようになりました。」

と、お礼を述べたそうです。

「どう致しまして、それはようございました。ところで、どちら様でしょう?」

もう、そのときは婦人は見えなくなっていたとのことです。

「確かに変な夢だ」

「まあ、いいじゃない、人助けが出来たのだし。」

「人じゃないわよう。仏壇に棲んでいるんだから...」

霊のお礼...か... 一体、誰の霊でしょうか?

そのころは、私の祖父母は、母方はもちろん、父方さえ、揃って健在だったのでした。

でも、これで終りではなかったのです。

驚愕するようなことが起こった...いや、 起きていたのでした。

「あれ?これは...」

その夏のお盆に、父の実家に帰省したときのことです。

私は、仏壇が新しくなっていることに気付きました。

他の家族も気付き、顔を見合わせたのは言うまでもありません。

実は、父の母は、父が中学のころに亡くなり、

健在なのは、その後向かえた後妻だったのです。

仏壇に納められているのは、私はもちろん、母もあったことのない実祖母の位牌で、

昔のことなので写真は残っていません。

でも、あらためて聞くその人の面影は、 生前のその人だったようです。



   



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