朱い塚-あかいつか-

佇む人

投稿者:じんげんさん



これは、霊感の強い友人から、

もう20年も前の高校の頃に聞いた話です。

その友人が、母親と姉と叔父さんで親戚の家に

お盆の法事に行った帰りの事です。

叔父さんの運転する車で、冷水峠に差しかかりました。

当時でも、お盆などの特定の時期には、

冷水峠の様な場所でも混雑していたので、

「旧道」の方を通って帰ろうという話になったのだそうです。

旧道が廃れて既に何年も経っており、

旧道沿いにあった集落も人が居なくなって久しかったので、

旧道は荒れ放題だったそうです。

車は、友人の叔父さんが運転し、

友人は助手席に、その後ろに友人の姉が、

残る席に友人の母親が座っていました。

曲がりくねった旧道を車のライトだけが前方を煌々と照らし出し、

まるでなにも無い所から道が浮かび出てくる様に見えたそうです。

そして、あるカーブミラーが在る大きく曲がったカーブを通りぬけた時!

それは、そこに居たそうです。

暫くは、誰も声を出さなかったと言います。

ようやく、友人が搾り出す様にお姉さんに聞きました。

「姉ちゃん、・・・今の・・・見た?」

お姉さんもかすれた声で返事をしたそうです。

「・・・み、見たよ・・見た。」

暗闇の中、カーブミラーの傍(かたわら)に

佇(たたず)んでいたのは・・・!

・・・真っ白な人だったそうです。

真っ暗なのに、ライトが当たっていないのに、

思い出して見ると随分と手前から立っているのが

見えていた気がしたそうです。

なにより印象に残ったのは、その顔・・・口が耳まで裂け、

顔の真中には大きな目がひとつ、

大きく見開いて居たそうです。

その後、叔父さんはあれた旧道を、

恐ろしいほどのスピードで駆け抜けて行ったそうです。

何処をどう走ったか良くわからないまま、

友人は家に帰りついていたのだそうです。

「考えて見れば、あんな場所であんなスピードで走る方が、

よっぽど怖かったかもね」

話を終えた友人は、びびる私達にそう言って笑いました。

で、この話には、後日談があります。

話を聞いてから数年後の事です。

その頃には、その話はあまりに出来すぎていたので、

私達ももしかしたらその友人に担がれたかな?

と思っていました。

そんな折、大学でやはり怪談話になったので、

私は別の友人にその話を聞かせてやりました。

話を聞いた友人達の表情が、

一様に驚きと疑いが混じった顔になる中、

一人だけ妙に青ざめた顔をしている友人が居ました。

私はそれに気が付いて、「どうしたん?」と尋ねると、

その友人はこう言ったのです。

「オレの別の友達も、同じ場所で、同じ者を見たっていいよったっちゃ」

ビックリして私は、その別の友達のことを問い詰めたのですが、

どう考えても最初にこの話を聞かせてくれた友達との接点は無く、

私達はお互い顔を見合わせるばかりでした。



   



朱い塚-あかいつか-