怖い話朱い塚-あかいつか-

前世

投稿者:ダーウィンさん



前世っていうものが本当にあるのだとしたら、

それはどうやったら知ることができるのだろう?

気づかないで忘れている、

「今の自分」の「記憶の深いところ」で眠ってしまっているのだろうか?

これが前世の記憶かどうかはわからない。

だが、初めて行った場所なのに

「確実に覚えている」のはいったいどういうことなのだろう?

今を思い起こすこと、数年前。

私は毎日ある夢を見つづけていた。

それは同じところで途切れてしまう夢だった。

昭和20年8月6日。

小学生でも知っているこの日は広島に原爆が投下された日である。

夢の中の私は男性か女性かはわからない。

ただ自転車に乗って、

夏の暑い日差しの中をどこかに向かっていたようだ。

そばの建物の階段でおばあちゃんが腰をおろして涼んでいた。

その場所は影になっていて、

少しの間暑さをしのぐにはいい場所だった。

そのとき、私はバランスを崩し、

自転車もろとも転倒してしまった。

自転車を起こしていると、そのおばあちゃんは

わらいながら「大丈夫かい」といったようなことを私に言った。

瞬間、おばあちゃんの姿が

真っ白い眩しい光の中に飲み込まれた。

漫画でみたテレポーテーションのように、

おばあちゃんの姿は「シャッ」と消えてしまった。

その階段におばあちゃんの影を黒く焼き付けて・・・・

そして私も何か強い力で吹き飛ばされるのだ。

夢はいつもそこで終わっていた。

起きた後はいつも汗びっしょりで、

涙を流していることさえもあった。

爆心地付近の温度は数千度にもなっていて、

瞬間、跡形も無く蒸発してしまった人もいるという。

「死の影」といい、影だけがコンクリートに黒く焼き付けられたというのは、

私がずいぶん後になって知った話である。(TVでみたっけ)

これが前世といえるかどうかは解らない。

ただ・・・私の中には「あの日」の記憶が

「確かに」残っているのだ。

資料館だけでは伝えきれない、

たくさんの人が一瞬にして亡くなった「あの日」の出来事を。



   



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