南畑ダム

怖い話

南畑ダム

投稿者:沢中 陽さん


約7年ほど前、当時私はカー用品の営業の仕事をしていて
佐賀市の取引先を4~5軒回って、その後、春日市の自宅へ
直帰する旨を会社に連絡したのち、営業車で帰途に着きました。
佐賀市方面から春日市へ行き来するのには
国道385号線の坂本峠を利用するのが最も早く、
私は以前からよく坂本峠を利用していましたので、
その日も当然坂本峠を通って帰りました。
大型車両通行禁止は当然と思える急カーブ連続の隘路を登りきって、
坂本峠を越えた頃はもう夜8時を過ぎていました。

そのまま、ずーっと道を下って来て、グリーンピアの方へ右に曲がるT字路を過ぎ、
約200~300メートル進んだ辺り、
「ヤマメ、ニジマス。釣り堀」の看板より100メートルほど手前でしょうか。
道路の左側、1メートルくらいの高さのある雑草が生い茂っている場所の横に、
突然3人の人影が現れたのです。
ロングヘアの大人の女性の横に寄り添うように
小学3~4年生くらいの男の子と5~6歳くらいの
女の子がダム湖の方を向いて立っているのです。
3人とも比較的白に近い色合いの衣服を身に着け、

服は全く濡れている感じはないのですが、3人とも髪の毛が、

びっしょり濡れて顔や胸元に張り付いている感じなのです。

一瞬呆然としました。

何故こんな場所に。こんな真っ暗な中・・・?
真横を通り過ぎる際、助手席横の車窓の向こうに、
まるで母子が記念写真を撮るときのように、

母親の身体に半身重なるようにして母から向かって左側に男の子、

右側に女の子が並んで立っているのを確かに見ました。

「誰かに置き去りにでもされたのだろうか?」

「下の那珂川の街中まで乗せてあげようかな」

そう思って振り返ったとき、もう3人の姿はありませんでした。
どこかに車を停めて確かめに戻ろうかとも思いましたが、
車を避けられるような空間が左手になく、
やっと見つけたスペースも何百メートルも進んだ場所だったので、
諦めてそのまま帰りましたが、しばらく経って思い返してみると、
3人とも生気の無い表情で、あの存在感と表情は明らかに霊体そのものでした。
その後も何度も南畑ダム湖畔のあの道を通っていますが、
あまり遅い時間でないので、以来同じ霊は見ていません。
ちなみに事件があったというトイレはブロック塀の方のトイレです。

数ヶ月前、夕刻、空が真っ暗になる少し前、いわゆる逢う魔が時というヤツですね。
件のトイレの前を通りかかったとき、道から向かって左側(上り方向)の
真っ暗な出入り口の中から、女性のものと思われる白く細長い片腕が
にゅうっと突き出しているのを目撃しました。

助手席の同乗者に

「トイレ!手がっ!」
と言ったのですが、振り向いた彼の目には何も見えなかったらしいので
今見たものを説明して、

「ちょっと戻って確かめてこようか」

提案したのですが、彼もそのトイレで起きた事件のことは知っていたので、

「やだ!絶対やだ。戻るなよ。怖過ぎる・・・」

と断固拒絶したので、そのまま坂本峠に向かって車を走らせました。

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