義理

怖い話

義理

投稿者:Tamさん


今晩は。今夜は友人Kから聞いた話を...

その夜、Kはやって来ました。手土産を持って。

「ちょっと聞いてくれよ。一杯飲りながら。」
ワイルドターキーの12年。
バーボン好きの私には、たまりません。
「随分いい酒を持ってきたね。高かったろ?」

他愛のない話から始まり、やがて「その」話が始まりました...
千葉県の茂原へ出張していた彼は、
深夜に車で帰宅することになりました。
午前1時頃、山中を走っていた彼は、
前方で「3人」組の一人がこちらに向かって

手を振っているのを認めました。

「どうしたんだろう?こんな夜更けに、何もない山中で?」

とりあえず、彼らの脇に車を止め、ウィンドウを開け、

「どうしました?」
「助かったよ、親切にどうも、えっ手を振ってたって?
おい!みっともねぇマネすんじゃねえよ。

まぁいいや。本当にありがとよ、まいってたんだ。」
一目で「怖いお兄さん」とわかりましたが、
車を止めた手前、丁重に車内へ案内しました。

「あれ?もう一人の方は?」

「いや、俺達は二人だよ。」

「どうも失礼しました。見間違えたようです。」

そんなやりとりをしながら、「兄貴」と呼ばれるお兄さんを助手席に、
「てめぇ」と呼ばれる弟分?が後部座席に、
と、二人を乗せ、出発しました。
「兄貴」は以外と気さくな人で、今夜、
「現場」でひどい目にあった事、
おかげで「事務所」まで徒歩で戻るハメになった事、等を
おもしろおかしく話してくれました。

「どこか明るいところまで乗せてくれ」

「いえいえ、目的地までお送りしますよ」

ようやく、街中に近づいて来た頃。

「悪いな、次の信号を左に曲がってくれ。」

後ろの無口な「てめぇ」さんです。

「何言ってんだ、てめ...」

「兄貴」は、振り向きつつ言いかけた途中で、体を戻しました。

その顔はなぜかこわばっていました。
今度は「兄貴」が無口になり、私は「てめぇ」さんのナビに従って
車を走らせました。

車は、お寺の前で止まりました。

「すまねぇ、さっきのコンビニのところまで戻ってくれ。」

「兄貴」が言いました。

「兄貴」は、そこでお線香と、煙草とワンカップを買って来ました。
再びお寺へ戻り、「兄貴」は車を降りました。
「てめぇ」さんは、なんだか放心状態です。

Kは、事態が飲み込めてきて、「兄貴」に続いてお墓へ向かいました。

「あんちゃんも、手合わせてくれんのか。
いや、人ってのは、義理欠いちゃいけねぇな。」

「兄貴」は懐から1万円札を取り出し、
「今夜は本当にありがとよ。奴の事だから、
あんちゃんに迷惑かけるような事は無いと思うが。
まぁ、今夜の礼だ、取っといてくれ。」
....

「おいK、それでそのお金はどうしたんだ?」

「いや、一人で使うのもなんだか怖いから、誰かと飲もうかと思って。

Tamはこういう話、強いだろ?」

(おいおい)

「まさか、このターキー...」

「大丈夫だよ。兄貴がそう言ってたから。」

(じゃぁ、なんでうちに来たんだよ!?)

と、言いつつ、半分以上を飲んでしまった私でした。

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