投稿者:YASUMIKIさん
私の父が倒れ、病院に入院したときのことです。
私は車で、父の着替え類を病院へ持って行くことになりました。
昼間で病院の駐車場は満車、仕方なく病院の塀づたいに
路上駐車、ぴったり着けるために、助手席の母を先に降ろしました。
車をバックさせる為に、ミラーを見るとすぐ後ろに
ばあさんがいたので、通り過ぎるのを待ちました。
通り過ぎないので、もう一度みるとミラー越しに私を見てる。
「なんだよっ」と思い、
窓から顔を出して後ろを見ると、
「あれっ、いねーじゃん。」
母のほうへ目をやると、救急の入り口で
怪訝そうにこっちを見てる。
「まっ、いいか」と車を止めながら、それにしてもさっきのばあさん、
この時期にずいぶん薄着だな、と思いました。
私は母の後について荷物を運びました。
「さっきはどうしたんだい」と言うので、
「ばばあがじゃましたんだ。」とだけ言いました。
母が、ここだ、と言って病室の前に立ったとき、
私の体の動きは止まりました。
入れない、いや入っちゃいけない。
私の五感はそう反応しました。
母は、「どうしたの」と言って中に入ってしまいました。
仕方なく入室。そこは8人の大部屋。
父は私が来たことに喜び、みんなに紹介しました。
私は全員をよく見ました。
「こいつらじゃない、この部屋変だ」と思いました。
父以外の入院患者に生気がないのはこの部屋のせいだ。
私は荷物を降ろしてそそくさと病室を出ました。
母も引っ張り出して、「なんでここなんだ、
どこでもいいから部屋を変えさせろ」と言いました。
「おまえもお父さんと同じことをいうんだねえ。
医者にはお願いしてあるから。
でも今夜はここだよ。明日は替えるから」
と母は言いいました。
翌日会社の帰りによってみると、病室は小部屋に変わっていました。
父は「ゆんべは大変だったよ。この部屋なら大丈夫だよ」
と言いました。私もそう思いました。
「覚えてないけど、夜中に狂ったように暴れたんだって。
くたびれちゃった。」と父は恥ずかしそうに言いました。
私と父の会話は、母には全く理解できませんでした。
私は、そのとき昨日のことを言いいました。
「死んだおばあちゃんが、真昼間に出てきたのも良く分かったよ。
心配してたんだ。あれは間違いなくオレのおばあちゃんだ。
うぐいす色のカーディガンを着てたぞ。」
父はうなずいていました。
二日後には元気に退院しました。