投稿者:裕之様の野望さん
「やっぱりあのマンション、なんか変だよ…。」
そう電話をかけてきたのは私の中学時代の友人Yであった。
Yは大学が他県にあるため、下宿をしているという。
Yとは中学を卒業してから会っていなかったので、
話をするのは実に久しぶりであった。
けれど久しぶりの再会がまさかあんなことになるとは
電話で話していたこの時の私には知る由も無かった。
Yがどうしても下宿しているマンションに来て欲しいと言うので、
仕方なく私は朝から電車を乗り継いでYが下宿している
マンションへと向かった。
そのマンションはかなり綺麗なマンションなので
Yの思い過ごしだろうと初めは思っていた。
だからまったく気にもしなかった。
Yと中学生時代の思い出話に夢中でしゃべり、
夕飯を近くのラーメン屋で済ましマンションに帰った。
Yも私がマンションに訪ねてきたばかりの時と比べると
ずいぶん元気を取り戻したので、
これなら大丈夫だろうと私も安心していた。
夜もふけ、深夜番組を見ながら話に夢中になって
気がつくと午前1時を過ぎて2時近くになっていた。
そろそろ寝ようかとしているとドアの外で物音がする。
階段を駆け上っている音や手すりをたたく大きな音が聞こえてきた。
こんな夜遅く一体誰だろうと思って外へ出てくると誰もいない。
おかしいと思って部屋の近くに戻ってくると
小太りの中年のおばさんが怒って立っており、
「あなた達ね最近毎晩こんな遅くに物音を立てているのは。
いったい今何時だと思っているの。近所迷惑も甚だしいわよ。
今度こんなことをしたら警察を呼ぶわよ。いいわね。」
と一方的に私達は怒られてしまった。
そしておばさんは私達と同じ階の自分の部屋へと戻っていった。
おばさんの一方的な話に興ざめした私達は
外の空気でも吸ってから寝ることにした。
しばらくするとあのおばさんは外出するらしく、部屋から出てきた。
また、何か言われたらたまったものじゃない,と思って
私達はそっぽを向いてみてない振りをしていた。
おばさんはエレベータを使わずに階段を使って外へ出ようとしていた。
そして階段を下り始めてほんの数秒後、おばさんは外に出ていった。
友人はおかしな事に気づいた。
友人「なぁ、あのおばさん、なんでもう外にいるんだ。」
裕之様の野望「そりゃああのおばさん、
階段を走って下りてったんじゃないの。」
友人「だってまだ1分どころか十秒ぐらいしかたってないんだぜ。
それにこの階8階だぜ。」
裕之さまの野望 「!?」
私達は怖くなって部屋に戻りましたが
しばらく怖くて寝つかれませんでした。
翌朝同じ階に住む人に聞いてみても
誰もそんな音は耳にしていないと言うのです。
私達はあのおばさんの部屋だろうと思われる部屋の前に立つと
愕然としました。
なんと誰も住んではいなかったのです。
その後友人がマンションを変えたのは言うまでもありません。
一体私達が見たあのおばさんは何者なのでしょうか。
いまだに謎のままです。