投稿者:YASUMIKIさん
前回の続きです。
父の幽霊騒ぎも一段落したのもつかの間。
南方戦線は激戦区、戦友はばたばた戦死。
そんなわけで基地内には、戦死者を弔う前に
一時保管しておく、霊安所がありました。
その霊安所の前での立哨は、皆いやがりました。
死体のそばにいるのはいやなものです。
特に息を吹き返す場合があり、しかしどうすることも出来ません。
ほんの一時息を吹き返してもすぐに死んでしまうそうです。
ですから、霊安所からうめき声が聞こえると、
明日はわが身と背筋が凍る思いだそうです。
それでも霊安所に入り、もしやと思いうめき声の主を探します。
その夜は父が霊安所の立哨の番の時でした。
タバコを吸っていると、何故か仲の良い戦友がとなりで、
同じくタバコを吸っています。
眠れないのか、と父は思いました。
戦友としみじみ、早く戦争が終わって日本に帰りたいな
というようなことを話したそうです。
その時父は、こいつ昼間は重症で、死ぬかと思ってた。
助かって良かったなと思ったそうです。
その時、父の全身の毛がそうけ立ちました。
立哨前に霊安所を検分した時、その人が横たわっていたからです。
戦友は、悲しそうな顔をしながら煙のように消えていったそうです。
この話、テレビの特集で見たような気がするぞ、と父に言うと、
「へー他にもいるんだ。」と言っていました。