投稿者:T.Rさん
今から十数年前のある夜、私は、
某大学の第2実習室で実習にいそしんでおりました
(お察しのとおり、第1実習室もあります)。
私の所属する研究室には、ある言い伝えがありました。
『夜一人で第2実習室にいると、第1実習室からの視線を感じることがある』
というものです。
しかし、私はその大学に入学してからその時までの2年半、
そのような経験は全くありませんでした。
当然、その夜もそんな噂のことは忘れ、実習に没頭していたのです。
ですが、噂は本当だったのです。
一緒に実習を行っていた同級生が実習室を出るやいなや、
その視線は私に浴びせ掛けられたのです。
しかし、噂には続きがありました。
『視線の方向に目を向けても、そこには誰もいない』と。
妙な所で図太い私は、「見てもいないんなら、見るだけ無駄」
という判断を下したのです。
そして、それが恐怖の一夜の幕を開く
きっかけになってしまったのだろう、と今は考えております。
視線は、物理的な圧力さえ加えて、私に向けられました。
人差し指にかなりの力を入れて頭部の一点を押されているような感じです。
しかし、私にも意地がありました。
こうなったら徹底的に無視してやる、
そう心に決めながら新たな課題を作成している時。
「ビシィッ!」というラップ音が第2実習室に響き渡りました。
反射的にその音の発生源に目をやった私は、愕然としました。
2メートル以上の高さから音が発せられていたのですから。
驚愕のために台無しになってしまった課題も忘れ、
震え上がった私は研究室に戻ることにしました。
何かの怒りに触れたのなら、そこから離れることが第1と思ったからです。
研究室には、さっき一緒だった同級生と先輩の、二人がいました。
安心した私は、二人にラップ音の話をしました。
二人は腹を抱えて笑い、さらに先輩は
「無視したやつはおまえが初めてだ」と笑いました。
それから3人で実習室に戻り、私は再び課題の作成に集中していました。
しかし、そこに先輩の一言。
「のどが乾いたな。誰かジュース買って来い」
一人になるのが怖い私の提案で、3人でじゃんけんをすることになりました
(うちの研究室では、先輩だろうと何だろうと、そういうときには同列でした)。
しかし、二人はパーで私はグー。
無常にも、私が一人で、
4階にある研究室から1階にある自動販売機へと
行かされる羽目になったのでした。
1階に行き、無事にジュースを買った私は、妙に気が大きくなっていました。
うちの研究室がある棟には3箇所に階段がありました。
なぜか、そこから一番遠い階段で棟内を一回りしてやろう、
と思ったのです。
しかし、その階段を目前にした私は、激しく後悔することになりました。
階段につながる廊下の目の前に、ロビーがあり、中庭に面しています。
ロビーの眺めを良くするために、そこはガラス張りでした。
そして、階段の前から何気なくガラスに目を向けた私は、
自分の背後に立つ黒い影をはっきり目撃してしまったのです...。
長くなってしまいました。
続きはまたの機会にしたいと思います。