帰路

帰路 怖い話
帰路

帰路

投稿者:エクセルフィッシュさん


私は茨城県・霞ヶ浦近辺に住んでいる釣り好きな高校生です。

これは2001年8月15日の夜の恐怖体験談です。
今日は私の地元では送り盆。13日からご先祖様と一緒に
飲み食いを共にし、15日の夜にお墓までお見送りをします。

ちょうちんのともしびに導かれ、ご先祖様と一緒にお墓へ。

私のご先祖様がいるお墓は、今では珍しくなった土葬です。
墓標も木です。
ですが、近代化の煽りを受けて私が眠るころには
「石の墓にお骨」と言うスタイルになるでしょう。

ウチではちょうちんは子供達が持つことになっています。
子供といっても一番下の年代という意味ですが
この日は三つのちょうちんが私達のご先祖様を導きました。
お墓につき、ハスの葉にお供えを盛る人とそれを照らす人、
線香に火をつける人に分かれました。
私が持っていたちょうちんは一番明るかったので
最後まで私はその場を薄明かりで照らしていました。

みんなはもう線香を盛り土に刺し終えていました。

私は最後の線香の束を貰うと、無縁仏に左から順に線香を一本ずつあげました。

そしてご先祖様のお墓にそれぞれあげていきました。
現在七つのお墓があります。
一番新しいお墓は私のお爺ちゃんのお墓です。
新しいかたから順にあげていきました。

最初の2つのお墓は墓標もしっかりしています。
が、古くなるに連れて朽ち果てた墓標や墓標の変わりに
木が植えてあるお墓もありました。
毎年この墓標の変わりに木が植えてあるお墓に
ちょうちんを吊り下げて帰ります。
私が線香を刺しに行ったときにはもうちょうちんが2つ
吊り下げられていました。

私は七つ目のお墓に線香を刺し終えました。
ですが、まだ私の手の中には線香が数本残っています。
私はお爺ちゃんのお墓に残りを全て刺しに行きました。

盛り土に一本一本刺していきました。

手持ちの線香が残り2本ぐらいになったときでしょうか?

その瞬間は唐突に訪れました。
私がお線香を上げる為に座り込んでいると…
いきなりなにかが左腕のひじ辺りに乗るのです。

最初は虫かと思いましたが違うようです…

なんか・・・ひんやりとした・・・何かが・・・

私は一呼吸間を置いてその腕をみました。

しかしそこには何もありませんでした。

ハッと立ち上がり、後ろを降り返りましたが誰もいません。

涼しい風が後ろから通り過ぎて行きました。

そのときです。

「こんばんはぁ」

ウチのおばあちゃんの声でした。

おばあちゃんは墓地の奥のほうまで続く道の側にいました。

誰かが来たのでしょうか?いつもの様に通行人に挨拶をしています。

ですがいつまでたっても返事は返ってきません。
ライトで道のまわりを照らしました。
ですが、やはり誰もいません。
おばあちゃんは笑っていました。
みんなも笑い始めました。
おばあちゃんはきっと誰かが遠くで照らしたライトの光か
何かを見て誰かかが来たと勘違いしたのでしょう。
みんなは笑っていました。
しかし、私の体験とタイミングがあいすぎていませんか?

私はちょっと不思議な気分で帰宅しました。

誰かがおばあちゃんに聞きました。

『おばあちゃんよぉ、誰に挨拶したんだぁ?』

おばあちゃんは笑いながら答えました。
『ああ、あれは誰かが道をぞろぞろと歩いてきたと思ったんだぁ』
みんなはまた笑いました。

おばあちゃんも笑っています。

しかし…私は…引きつり笑いが精一杯でした…
私の腕に残った誰かの手のような感触・・・
直後の不可視な人達。
今考えると、別れを惜しむ私達の先祖の誰かが
私に触れたのでしょうか?

おばちゃんが見た人達は・・・

ちょうちんの光に送られていく人達だったのでしょうか?

『来年またくるよ』と伝えたかったのでしょうか?

それとも・・・・・


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