投稿者:慧音さん
ある日、飼い猫が仔猫を産みました。
4匹の仔猫はそれぞれの毛色から安直に
「白黒息子」「黒息子」「白息子」「白娘」と名付けられ(笑)、
すくすくと成長していきました。
所でこの当時、実母は猫を呼ぶ際
「にゃんにゃんにゃんにゃんにゃん……!」
と妙に甲高い作り声で絶叫していました。
この声を聞くと、どの猫も(餌欲しさに)一斉に集まった物です。
その様子があまりにも可笑しかったのでいつしか
私たちも面白半分に実母の声真似をして猫を
呼ぶようになっていました。
その日も私はそうやって猫を呼びました。
いつものように、2匹の親猫と4匹の大猫化した仔猫が…。
「あれ?1匹…黒息子が居らん……?」
その瞬間。
背後…北の方角…
頭上の妙に蒼い夕焼け空の高みから、風が足元辺に
吹き降りた感じがしました。
いえ。実際、風は吹いていたのです。
何の変哲も無い、夕方の風が。
「…黒息子?」
それを、何でそう思ったのかは…今でも謎です。
それから数日後。
風を感じた方向にある田圃の中から
あれ以来ずっと戻って来なかった
黒息子の轢死体が見つかったので連れ帰って
背戸に埋めた、と家族から聞きました。
――戻って…来てくれていたのでしょうか?