鵺さんの投稿です
とある若いカップルが、深夜の真っ暗な山道を
ドライブしていた時のこと。
ラジオから残酷非道で凶悪な囚人が、
カップルの男性の愛車が走行している場所の近辺に位置する
某刑務所から脱獄したという臨時速報が流れた。
二人はそれに怯えながらも、でもせっかくここまで来たのだからと
ドライブを続けた。
すると突然、車のエンジンの調子が悪くなり、動かなくなってしまった。
このままではらちが明かないと判断した男性は
「麓まで行って助けを呼んでくるから、ここで待っていてくれ」
と山道を下りようとしたが、脱獄囚に怯えている女性はそれを引き留めた。
そして最終的に「きちんとロックして車の中にいれば、絶対に大丈夫だよ」
と男性が言い、それに渋々納得した彼女は男性の言う通り、
車内で彼を待つことにした。
それからしばらくして「ズリッ…。」と時折、何かを擦るような音が聞こえてきた。
女性は底知れぬ恐怖に駆られながらも、
車内で不気味に鳴り響く音を聴きながら、必死に男性の帰りを待ち続けた。
だが、待てども待てども男性は帰って来ず、音も未だに鳴り続けていた。
やがて夜が明け、一台のパトカーが女性の乗っている車の近くへやって来た。
女性が安堵すると、二人の警官が降りてきて、
「真っ直ぐにこちらへ歩いてきて下さい。ただし、決して振り返ってはいけませんよ。」
と奇妙なことを言う。
女性は怪訝に思いながらも警官の指示通りに車を降り、
真っ直ぐに警官のいる方へ歩き出したが、好奇心に負けたのか、
ふと後ろを振り返ってしまう。
なんと、そこには道の脇の木に吊るされた、見るも無惨な男性の死体が。
一晩中聞こえていた、あの「ズリッ…。」という音が車内に響いていたのは
殺害された男性の死体が風に揺れ、その足が
車の屋根をこすっていたからだったのだ。