海洋センター

海洋センター 怖い話
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投稿者:蛍夜さん


去年の夏、あたしたちが体験した恐怖体験を話させていただきます。

インターネットをはじめて、あたしはとあるチャットにはまっていました。

そのチャットの中でも仲のいいメンツが去年の夏、

大掛かりなオフ会ということで泊りがけで海にいくことになったんです。
メンツはあたし(女)をあわせて女の子が四人。男が六人。
合計十人の大所帯です。

北は愛知県から南は福岡までのメンツです。
場所は大阪のとある青少年海洋センター。
なんといっても安さが魅力でした。

八月某日。新幹線、電車、飛行機と様々な交通手段で大阪に集合。

現地集合のバイクの一人を除いて皆でそこへいきました。
潮の匂いが充満する道。海へ来たんだ!
という思いをいっぱいにしつつ、その場所へ徒歩でいきます。

すると途中に目に付いたのは、お墓。

「キモダメシしようよー!」というあたしの意見は
他の女の子によって却下。

だがわざわざする必要も無かった事に後々気付く事に成りました。
ついたその日はもう海には行けませんでしたので、
晩御飯を食べ、海洋センター内の探検(お約束ですが)と、
お部屋とお荷物の整理。
そして、買出しでした。

晩御飯の時でした。

食堂のような場所で食べるのですが、そこをあたしは「知っていた」のです。
来た事がある場所ではありません。
ただの勘違いなのかもしれませんが、夢か何かでみたような……

そんな気がしたのです。

海洋センター内の探検中、そこでもまた奇妙な感覚がありました。
妙な悪寒と、奇妙に上がる心拍数。
だけどそれを感じているのはあたしだけのようでしたので、
負けず嫌い――というよりは他人に弱みを見せるのが
とことん嫌いな性格のため、あえて何もいいませんでした。
ですが、別の男子がいいました。
「ここ、夢でみた。この場所からの風景」
その人はそういったものを先に夢で見る事が幾度かあったらしく、
またか、と思った程度だったそうです。

それから、お部屋。お部屋は船室を模した形でした。

部屋の名前まであり、船の名前(忘れましたが日本名です)がつけられています。
「おもしろーい!」と最初は喜んでいました。
が、面白くなんてなかったのです。
その夜、とりあえずといったかんじの軽い飲み会
(ホントは青少年海洋センターでやってはいけませんよ/(^^;)のため、

近くのコンビにまで買出しに行きました。
行きしなにあったお墓の前を通るのはさすがに気がひけて、
お墓が見えない道
(といっても道路か歩道かの違いだけで、実際は墓の右下にある歩道で近いです)

でいきました。

そして帰り、一番最初に異変を覚えたのはあたし自身でした。

前を走っていった男二人を追うように走り出したあたしは、

例のお墓の近くの道へ来ている事に気付いていませんでした。

ですが、坂道を走っている途中耳元で声がしたのです。

低い、男性の声。

近すぎてその声の中身は聞き取れませんでした。

思わずあたしは、息と足を止めていました。
前をいく二人の背中はもうすでに小さく、
あたしは一人で走っていましたから隣りには誰もいません。
後ろに付いて来ている人たちもまだ遠く、
あんなに近くで声が聞こえるはずはありえない位置でした。

ヤバイ、と思ったあたしは咄嗟に聞こえた方の上を見上げました。

道路。
そしてその横にはお墓があるはずでした。
もしかして、という気持ちがすでにその時点で肯定にかわっていました。
小学生の頃は色々と見えたりもしていましたが、
もう随分なかった感覚に戸惑い(当時高校二年)、

後ろを歩いていた女の子(Mちゃん)にしがみつきました。

「なんか聞こえた」

それだけを言うのに精一杯で、状況を説明する気にもなれませんでした。

なぜなら声が聞こえたのはそのときだけではなかったのです。
Mちゃんにしがみつきながらセンターに帰るまでの間、
断続的に聞こえていたのです。その男性の声が。

とりあえずその夜は、お酒の力と星の力(めっちゃ綺麗でしたんで)を借りて就寝。

アレは聞き違えだ、と何度も言い聞かせていました。

それだけで終わればよかったんですが、それはきっかけでしかなかったのです。
次の日。昼間は海で泳ぎ、船でクルーズし(て酔って)、楽しみ疲れたあたし達は、
それでもまだ遊ぶ気でいました。

今夜はバーベキューだ!

お約束の火が燃えないという事態に四苦八苦しながらも、

暗くなっていく海辺を眺めながらのバーベキューを楽しんでいたあたしたち。

ですが、またもやあたしが奇妙な体験をしてしまうことに成ります。

突然、海辺の方(背中側)から服を引っ張られたんです。
その時隣りに居たのが悪戯好きな男性でしたので、
力一杯その人の仕業だと決め付けたあたしは

「うぅ!」と軽く怒りながら振り向きました。

ですが、その男性はきょとんとした顔でこちらをみました。

「え?」

「今服引っ張ったやろ!」

「……引っ張ってないけど?」

明らかに戸惑った表情で言います。

「引っ張られたもん!」

「いやおれじゃない」

その時、あたし達の前に居た女の子(Rちゃん)が言いました。

「私見てたけど、引っ張ってなかったよ?」

話を聞いてみると、その場に居た人たちほぼ全員が(見てなかった人も居ますが)

『あたしが突然怒って振り向いただけ』に見えたそうです。
左右にいた男性は一人は片手にバーベキュー用のはさみを、
片手にお肉を持っていましたし、もう一人は団扇とはさみ。

両手が明らかにふさがっています。
一瞬訪れた沈黙を、とりあえずあたしは笑いで誤魔化しました。
バーベキューは楽しく食べたいものですし。

しかしバーベキューの後、Rちゃんが近寄ってきました。
Rちゃんから花火を貰いながら、さっき妙なこと言ってごめんね、
と謝ると彼女は「大丈夫?」と訊いてきます。

ですが、どう見てもその子のほうが顔色が悪いのです。

「あたしは平気だけど……大丈夫?」

訊くと、彼女は小さく首を振りました。

「さっきから……海辺側の体が半身ぴりぴり痺れてる」

海辺側――さっきあたしが服を引っ張られた方です。

偶然、とは思えませんでした。
そんなあたし達を気遣ってか、それとも単なる馬鹿か(笑)、
一人の男子(Dくん)が海辺の桟橋の方へ降りていきました。

「大丈夫やってー!」
笑いながら桟橋を走り、そして……転びました。
危うく海に落ちかけたのです。

「……引っ張られた気分」

「大丈夫ちゃうし!」

思わず突っ込みを入れつつ、それでも不安を拭いきれず……

あたしたちはバーベキューと花火を終え、部屋に戻りました。

ここで少し部屋の見取りを話しておきます。
あたしたちは男部屋と女部屋の二部屋を取り、
その部屋はお互いのベランダが一つに繋がっていました。
ベランダからは海と、何か用途の知れない高い建物
(探検に入った時鍵が掛かっていて入れなかった)が見えます。

部屋の中は(ここでは体験した女部屋のほう)二段ベッドがよっつあります。
ベランダ側の壁の左右に一つづつ。
それにくっつけるかのようにまたひとつづつ。

縦長の部屋は左右をベッドで囲まれた形です。
その部屋の女部屋で遊んでいたあたしたち。
ですがまた奇妙な事が……
夜中過ぎくらいでしょうか。
ベランダを叩く音がしたのです。

そのときすでに男部屋のほうで眠っていた男の子が一人いましたんで、

その子が起きてきたのだろうかと思い、あたしはベランダをあけました。

しかし、誰もいません。

「……?」
風だろうかと首をかしげながらベランダの扉を閉じました。
すると、男性の一人が訊いてきました。

「なにしてんの?」

「今、扉叩かれへんかった?」

「? 聞こえへんかったけど?」
聞こえたのはあたしだけだったようで、これは完全に
風か気のせいかだろうと思い放っておきました。

何となく気味が悪いのでせめて見えないようにカーテンを閉めました。

暫らくすると、また聞こえてきました。
ベランダの方を見ると、カーテンの隙間から外が見えます。
ですが、誰もいません。
すると、今度はあたしではなく先ほど
「体の半分がぴりぴりする」といっていたRちゃんのほうが反応しました。

「ノック!」

「聞こえた、よなぁ」

相槌を打ったのは、先ほど桟橋で転んだDくんです。
声が聞こえたあたしと、何らかの形で体験した二人が反応していたんです。
他の人たちは全くでした。

「気のせいやって。ほら、誰もおらんやろ?」
別の男性が重くなった空気を払うかのようにいい、カーテンを開けました。
まずい、と思った矢先……

「誰かいる!」

Rちゃんが短く叫びました。

「え、おるん?」

カーテンを開けていた男性はぎょっとしたようにベランダを覗き込みます。

ですがRちゃんの「はやくしめて!」の声にあわててカーテンを閉めました。

ですがカーテンレールとベランダの扉、その間の僅かな隙間はどうしたって開いてしまいます。

Rちゃんが震え始めました。

「そこにいる」
あたしはDくんの方をみました。Rちゃん以外で
ノックの音を聞いたり何らかの体験をしたのは二人だけ。

「見える?」目で問い掛けると首を横にふられました。

「見えない」
あたしも見えはしませんでした。
だけどそのうちまた声が聞こえ始めたんです。

低い男性の唸り声――

(マヂですか……?)ぞっとしませんでした。
ですが震えているRちゃんに言う気にはなれず、
他の人たちにもいえず、必死にこれは幻聴だと言い聞かせていました。

ですが内耳にこびりついたかのようにその声は離れません。

(うわーっうわーっやめてくれぇ)……半ばパニックです。
しかも耳がなれてきたのかそのうち「呻き声」の中身が
言葉として僅かながらわかり始めてくるのです。

『タスケテ』ムリ!『ハヤク』ナニを!? 

こんな時にこんな声にいちいち反応しても仕方ないとは思いつつ、

内心パニック状態のあたしは何故かいちいち言葉を返していました(^^;

ですが、あたし以上にパニック状態なのがRちゃん。

震えながら、ずっと「いる」と呟いています。
さすがに彼女がそう言っているベランダの一番近くの
ベッドに一人でいるのは怖くなり、

あたしはDくんの近くに行きました。
Dくんの近くにはMちゃんや他の皆がいましたし、
すこし安心しだした時でした。

「部屋の中におる!」Rちゃんが短く叫びました。
彼女が言うには、あたしが今まで居た二段ベッドの上段と、
その横のベッドの上段の間に「いる」らしいんです。

そして顔がいっぱい見えてきた、といい始めました。
リノウムの床に映っている、というのであたしたちは
手分けして毛布を床に敷き詰めました。

気休めにしかなりませんが、気休めですら藁をも掴む思いでやっていました。
カーテンの隙間だけはどうしようもなかったので、
近寄らず皆見てみぬふりをしていました。
そして毛布を敷き終えた後、またDくんとMちゃんの近くにくると、
今度はMちゃんが小さく悲鳴を上げ、

あたしにしがみついてきました。

「どうしたん?」訊くと、彼女はRちゃんのほうをみました。
神経過敏状態になっているだろうRちゃんに
これ以上気をもむようなことは言いたくなかったからでしょうか。

MちゃんはRちゃんに聞こえてないことを確認した後、あたしにそっと言いました。

「今、後ろ、何か、通った」

Mちゃんの腰掛けていたのはベランダから離れたベッドの下段。

ベッドの後ろは直ぐ壁です。

誰かが後ろを通るなんてことはまずありえません。
皆視界の中にいますし、いないのは隣りの部屋で
一人お気楽に夢路についているであろう男子だけ。

そいつが入ってきたとしても背中を通るはずはない。
Mちゃんは壁から身を放し、
毛布で自分の体を包んでそのベッドから降りました。

Mちゃんがおりたことで床に座っている人口がどうあっても飽和状態になり、
ですがそのベッドにそのまま居るのは気がひけて、
あたしとDくんはベッドの上段へ移りました。

まずったな、というのは直ぐにしれました。

なぜならそのベッドの上からだと部屋全体が見えますし、

Rちゃんが言っている「二段ベッドの上段と上段の間」は目の前だからです。

すると内耳にこびりついていた呻き声がいつのまにやら涙声にかわっています。

おそらく、その「二段ベッドの上段と上段の間」が関係しているのだろう……

そう思っていた矢先、Dくんの体に異変がありました。
隣りのDくんの腕に目をやると、なんと鳥肌が立っているのです。
このクソあつい熱帯夜。八月の真夏に?

「寒いん?」

「いや。さむないねんけど……なんやろ……なんか」

言ううちに、Dくんの目から次々と涙が零れ始めたのです。

「Dくん!?」
大きく震え始め、泣き出すDくん。
あたしは慌ててDくんの手を握っていました。

そうしないと、何処かへ連れて行かれそうな……そんな気がしたのです。

理由を訊いてもDくん自身判らないようで、ずっと首を振っています。

「わからへん。けど、なんでか涙が出てくる……」

そのDくんをこわばった表情で見ていたRちゃんがぽそりといいました。

「その人が、泣いてるから……」
彼女が言うには「二段ベッドの上段と上段の間」にいる
男性の顔が泣いているのだそうです。

もしかしてDくんは感応を起こしたのでしょうか……?

Rちゃんはその「男性」の方を見ながら言います。

「……若い人。17、8……? 泣いてる……なんか言ってる。

……何言っているかは聞こえないけど……なんだろう……」
Rちゃんは声は聞こえない。見えるのです。
ですがその男性の言っているのは……

「『タスケテ』」

思わず声に出していました。

「……判るん?」

「ずっと、聞こえてたよ」

もう隠しても仕方ないだろうと、あたしはRちゃんに言いました。

何かがおかしい。
聞こえるあたしと、見えるRちゃん。
そしてその男性自身のように泣き出すDくん……。
落ち着きだしたのか、それとも単に開き直ったのか
(見えるものは見えるんや、しゃーない?)

Rちゃんが見えているものを説明しだしました。
ベランダの外に見えるひと。
それは女性だったそうです。

そして、「二段ベッドの上段と上段の間」にいる男性のほうを見ている、と。

そして女性が男性を待っている――と。男性は女性のもとへ帰りたがっている――

そんな気がする、そういいだしました。

そこにいるのに。お互いは、近づけない。そばにいるのに、知らない。

なんだかすごく切ない気持ちに成りました。

そうこうしているうちに、太陽が上り始めました。

Rちゃんがふと顔を上げて訴えるようにいってきました。

「海……行こう。海へ行きたがっている」
あたしとRちゃん。そして何とか涙が収まったDくん。
Mちゃんともうひとり付き添いできてくれることになった男性。

その五人で朝日が昇ったばかり、五時過ぎの海へ出かけていきました。
場所は昨夜バーベキューをした場所。
つまり、Dくんがひきずりかけられた桟橋です。
最初に別の男性が「夢でみた」といっていた
あの場所から見えるところでもありました。
あたし、Rちゃん、Dくんは三人ずっと一緒に居ました。
何故かは判りません。

ですが三人離れると誰かが何処かへ行ってしまうような感覚があったのです。

桟橋につくとRちゃんはひざをつき、海水に腕を浸らせました。
それに見習うようにあたしたちも水につける。
肩にのっていた重みがふときえるような感覚でした。
しばらくそうしたあと、Dくんが桟橋の継ぎ目を通り、
つながっている方に渡ろうとしました。その時でした。

「あかん!」

いいようも無い感覚にとらわれ、あたしは慌ててDくんの腕を引っ張っていました。
Dくんも驚いたようにあたし達の方に戻ってきます。
Rちゃんがふるえていました。

「あかん。三人バラバラになったら、あかん」
Dくんはぞっとしたような表情で言いました。
「俺だけ取り残されるような気分になった」。
桟橋はわずかに揺れています。船のように。
朝日のほうに向って出航を待っている船のように。
暫らくその場で居たあたし達は、その後
朝日の射す海に向ってお祈りをし、部屋に戻りました。
部屋に戻ってからは、腹立ち紛れに昨日何も知らずに
眠っていた男子を起こしたりしていました。

ですが、桟橋のゆれがまだ続いているかのような感覚が離れなかったのです。
船酔いに似た感覚。どうやらあたしだけでなくRちゃん、
Dくんも感じているようで、

あたしはしまいには立てなくなっていました。気持ちが悪くて。

そんなフラフラの状態で朝ご飯を食べに食堂へ降りました。
ほとんど食べられたものではなかったのですが、
帰りに食堂で塩を分けてもらい、部屋に上がりました。
塩を撒き、水で清め、Rちゃんが特に感じた
「ベランダ」と「二段ベッドの上段と上段の間」には

盛塩をしてその恐怖の部屋を後にしました。

海洋センターからの帰り道、お地蔵を見つけました。

その場所でもう一度体に塩をふりかけ、祈りを捧げ、
まだふらつく体を騙しつつあたしたちは電車にのって帰りました。
(余談ですがその後また別の場所へ遊びに行ったのですから元気なものです)。

ですが、その船酔いに似た感覚は家に帰ってきてもしばらくはおさまらず、
Rちゃんにいたっては「まだ見える。ついて来ている気がする」とのことで
福岡に帰宅後、お払いに行ったそうです。

後日談です。

その時の部屋の写真をそういった能力が強いらしい友達に見せたMちゃん。

するとその友達の答えはこれでした。
「うっわ。おりすぎやろ。なんちゅー部屋とまっとんねん。
そりゃ、人酔い……じゃない、幽霊酔いもするわ」

……あるんですね、こういうの。
ちなみにあたしもDくんも、お払いに行ったRちゃんも、
その後はまったく何もありませんでした。

アレは一体なんだったんでしょうか。

やっぱり入り盆だった事が関係しているんでしょうか……?
ちなみに、これをかいている途中にわたしは
「不協和音のような変な耳鳴り」が幾度も聞こえてしまいました……
ていうか今聞こえています。
頭痛いし……。
なので読む場合も気をつけてくださいね。(先に言え)

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