投稿者:のぶゆきさん
ある夏の夜、ギタリストである私の兄は
日が変わっても次のセッションで演る曲の
チェックを念入りにやっていました。
その日に限っていつもはホームレスで賑わう
兄の家の前の広場には人っ子一人いませんでした。
兄がひとつのフレーズを反復して弾きだすと急にアンプからノイズがはしりました。
「接触やばいんかいな・・」兄はおもいました。
しかし、そのノイズというのがバチバチとかザザザンという
接触不良からくる音ではなく、
単調なザーというテレビの砂嵐のようなおとなのです。
兄はなぜかそのノイズをバンドサウンドをいつも
分析するように聴力でひもといていきました。
兄の耳の中で砂嵐はじょじょにその速度を失い、
輪郭をおぼろげに現しはじめました。
”ザー”
”ズゥゥゥゥ”
”ウオォンウォォン”
”ウぉおンぉおぉン”
そして・・・・・・・・・・・・・・・・!!!
”のおぼおとらやーやーさんびゃくさんぼだやーきゃらまきれいしゃ”
なんと老婆が唱えるお経だ!!
そしてモノラルに聞こえていたお経がだんだんとステレオになっていき
最後はまるで耳元で叫ぶようにきこえていました。
「しゃれにならん・・」と思ったその時、お経は止み遠くから
近づいてきた救急車のサイレンが隣の家でとまったのでした。