投稿者:雷神の眷族さん
今は昔、心霊スポットを訪ね歩いていたころの話。
私はいつものメンバーでその日もある廃虚を訪ねるつもりでした。
友人宅に集合し、私の車に4人で出発しました。
家の前の路地から広い道に出るT字路の突き当たりに
ショルダーバッグを提げて自転車に乗った学生風の男がいました。
私は左に曲がるウインカーを出し、その男が右によけるのを確認して車を進めました。
なんとなくルームミラーで確認したら、男はこちらを見送るように佇んでいました。
市街地を20分程走ったとき、信号待ちでふと歩道を見ると
自転車に乗った人が同じように信号を待っています。
「今夜はよく自転車の人が目に付くなあ。」
私がなんとなくつぶやきました。
助手席の霊感少女もじっとその人を見ました。
後ろの二人もおしゃべりをやめて見ていました。
なんとなく、車内が沈黙し、信号が青になったのを確認した私は
いやなムードを振り払うように急発進しました。
みんなはぎこちなく、それでもだんだんと普通の調子を取り戻して、
車内がにぎやかになってゆきました。
深夜の国道はすいていてしばらく快調にとばしました。
先に見える点滅信号が青になり、すぐに黄、赤と変わりました。
「人がいなかったような気がしたけど?」
しかし止まらないわけにはいかないので停止。
街灯があまり明るくないので薄暗い歩道に自転車に乗った人がいました。
と、霊感少女が窓を開けて怒鳴りました。
「えーかげんにせーよ、コラア!三べんも出てきやがって。消えんかい!」
その人影は、ショルダーバッグをかけ直すと薄くなって消えました。