投稿者:yujoさん
私が子供の頃、何の用事であったか忘れましたが、
叔父と母親と従兄弟2人である場所へ向かう途中、
本道で事故渋滞が発生していた為、
旧道を利用したことがあります。(当時は既に移転集落跡地になっていました。)
当日は雨で、叔父と母が旧道を通るかどうか前の席で話をしていましたが、
時間的に旧道を通る方が早いだろうということで、旧道を通ることにしました。
かなり細いくねくねとした道を通り、外灯のない暗い道を進みました。
雨はだんだん酷くなり、アスファルト舗装はしてありますが、
路面は悪く、時々がくんと衝撃が伝わる程でした。
上り坂になったとき、自転車に乗った人が
ものすごいスピードで下ってきてすれ違いました。
それまでやかましいほどおしゃべりをしていた従兄弟の1人が急に青い顔をして、
何もしゃべらなくなしました。
どうしたのか聞いても何もしゃべろうとしません。
その時は気分が悪いのだろうと思ってそれ以上誰も聞きませんでした。
しばらくして、叔父と母が、さっき通った道のようだ、
道を間違えているんじゃないのかと話をはじめました。
通常であれば、30分程度で抜けるはずですが、
その時点で、1時間以上かかっていたと思います。
そうこうしている内に、視界が開け、
草原に立派な2車線の直線道路が見えました。
いつの間にこんな立派な道が出来たのだろうと、
叔父と母はにこにこ話していましたが、
叔父は突然車を停めました。
なにげない一言で車を止めてしまったのです。
「何で、こんなに揺れるの?」
叔父は真っ青な顔をして、タバコに火をつけ、
「こういうときは動いてはいかん。きれいな道に見えるよな。」
と言い、一服すると、ドアを開け、土砂降りの車外へ出ました。
そのとき、車内の空気が、サア-っと変わりました。
次の瞬間、誰も何も言えませんでした。
ヘッドライトが照らしていた草原の立派なアスファルト2車線道路は、
ガードレールもない山腹の細い砂利道に変わりました。
タバコをくわえながら、叔父はびしょぬれになりながら1時間近くかけてバックし、
旧道に戻りました。その後は道に迷うこともなく家に帰ることができたわけですが、
あまりにも時間がかかってしまったので、私は途中で眠ってしまったようです。
後日、だいぶ経ってから従兄弟に何であの時黙っていたのか聞いてみると、
怖くて何も言えなかったとのことでした。
従兄弟によると、自転車に乗っているのに背が高く、
軍服の背中に重そうなカバンを背負い、
顔はよく見えなかったとのことですが、
鬼のような形相で睨まれたのだとのことでした。
当日、ぜんぜん怖くなかったのに
叔父や母や従兄弟の話を聞いて怖くなったことを覚えています。