投稿者:ユーリカさん
私の家はとんでもない田舎です。
その家の近くに断崖絶壁の奇岩があります。
ロッククライミングの練習をする人がよくいたのですが、
ハヤブサが巣を作ったという事で、
崖から登るのは禁止になってしまいました。
現在では落石、雪崩防止のためのスノーシェードがありますが、
当然、昔はそんなものはありませんでした。
今から5、60年ほど前、夜になるとこの奇岩の前の道に
女が立っているという噂が立ちました。
白い着物を着た美しい、そしてとても背の高い女だとか・・・。
ある夜、ひとりの男が夜中に子供が熱を出したので、
奇岩の向こうにあるお医者さんに薬をもらいに行きました。
真っ暗な中を歩いての帰り道、奇岩の前にさしかかると、
女が立っているのがぼうっと見えます。
その男も噂には聞いていました。
噂通りの美しい顔立ちでしたが、奇妙な程背の高い女です。
女はもちろんこの辺りの者ではありません。
田舎の事ですから、近隣の人達の顔はほとんど知っているのです。
女は「私の子供が熱を出して・・・」と話しかけてきました。
「ヒッ!!」 男は声にならない声を出して、
走って家まで逃げ帰ったそうです。
ぜいぜいと荒い息が治まって落ち着いてみると、
医者からもらったはずの薬がありませんでした。
数日後、その奇岩の裏手で
大きな白い狐が猟師に撃ち殺されました。
それ以来、奇岩の前に立つ女は姿を見せなくなったそうです。
この話は、あの晩、熱を出した子供が
父親から聞いたという事です。