父の体験談一

怖い話

父の体験談一

投稿者:YASUMIKIさん


父が太平洋戦争で南方戦線に出兵していたときの話です。
敗戦色濃く、内地(日本)への引上げ船への護衛の為、
父の所属する部隊からも数十名が護衛艦に乗り込みました。
合計四隻の小さな船団です。

父を含む残った部隊は、無事を祈りながら見送ったそうです。
しかしその翌日、敵の攻撃を受け、
撃沈全滅という知らせが部隊に入りました。
その晩、父が基地で立哨していた時のこと、
桟橋の方から草むらをかき分けながら人が近づいてきたそうです。
月明かりで、見慣れた軍服から、
父の部隊の兵隊であることが分かりました。

父は軍隊式に、「誰か?」と小さく呼びかけました。
相手が父から数メートル先で立ち止まったとき、

部隊の上官であるY曹長であることが分かりました。

父は敬礼をしながら、「Y曹長殿、ご無事でしたか」と思わず言いました。

Y曹長は護衛艦に乗っていたのです。

知らせは間違っていたんだ、みんな無事だったんだと父は安心し、
部隊に知らせようと思ったその時、
Y曹長の姿がかき消すように消えてなくなりました。
事が理解できなかった父は、何度も曹長の名を
呼びながら探しましたが、見つかりません。
姿が消える前ににっこりと父の名を呼んだ気がしたのを
思い出したとき、恐怖で全身の毛がそうけ立ち、
死んでしまった戦友を思い、涙が止まらなかったそうです。
明朝、父は大騒ぎし、兵隊の指揮を惑わした罪で
一週間監禁処分となりました。

公平だった父は、処分が解けた後、恐怖を分かち合う為に、

幽霊のマネをして部隊中の兵隊を夜中に脅かし続けたそうです。
楽しかったと言っていました。
バチ当たりな人です。


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