投稿者:若鷹さん
以前、「重すぎる」という十三佛での体験を
投稿させていただいた若鷹です。
この話は、その体験より随分前の話です。
当時、私には全く霊感などはありませんでした
(いまも、自分にそういう能力があるとは思いたくありませんが)。
ある夏、高校時代の友人と犬鳴峠に行きました。
車二台、男女全九人という大所帯です。
私たちはその頃、名前だけは聞いていましたが
犬鳴峠の詳しい場所を知りませんでした。
道路地図を頼りに、峠に向かいます。
実際に行ったことのある人はわかると思いますが、
現在は閉鎖されている脇田側の道から旧道を登っていきました。
もちろん、車で。
しかしいくら走ってもトンネルらしきものが見えてきません。
速度を落としてあたりを見回しながら走っていると、
私たちの後ろから車のヘッドライトが迫ってきました。
一旦車を停め、車を降りた私たちに
その後ろの車に乗っていた人が話し掛けてきました。
「どこまで行かれるんです?」
「犬鳴トンネルです」
「ああ、僕たちは犬鳴村に向かってるんです。
トンネルはその先ですよ」
いい加減不安だった私たちは、その言葉に安心してさらに進みました。
ですが、道はくねり、荒く、どんどん狭くなっていきます。
そうこうするうちにとうとう車は立ち往生。
前方の軽自動車を運転していた友人が、
一人車を降りて先の様子を探りに行きます。
そして、慌てて戻ってきた友人がひとこと。
「この先、道がなかばい!あんまま行っとったら危なかったて」
そんなばかな。だってあの人たちが……。
後ろを向いた私たちは全員が言葉を失いました。
ぴったりとついてきていたはずの後ろの車
(たしか、福岡ナンバーでした)の姿がどこにもないのです。
その道は狭い一本道。両側は林で、脇道などもありません。
どこかへ行けるはずがないのです。
おまけに、後ろ(私が乗っていたほう)の車のボンネットから煙が。
怖くなった私たちは、急いで戻ることにしました。
延々とバックで。
なんとか方向転換できるところまで戻り、みんなで話し合いました。
なんだか、脇に見えるビニールハウスと壊れたトラクターが不気味です。
トンネルは諦めよう、ということになり山道を戻っていると左手に、
唐突にそのトンネルが現れました。
「うわ、こがんところにあった!」
いわずと知れた、旧トンネルです。
行きでは何で見つけることができなかったのか。
せっかくだからということで、私たちは車のまま
トンネルに入ることにしました。
今度は逆に、さっきまで白煙をあげていたほうの車から
トンネルに侵入します。
いざトンネルに!というときになって、その車のドライバーが急ブレーキ。
「どがんした?」
「足が……」
見ると、ドライバーの左足が激しく震えています。
自分の意に反した動きでクラッチを切れないのです。
私たちは何もできずにその震えが収まるのを待ちました。
懲りない私たちは、それでもトンネルへ。
結局トンネルではなにも起きませんでした。
出口が塞がれていたのでまたバック。
新道へと戻ることができた私たちは、そのまま峠を後にしました。
道沿いにあるファ○リーマートで一息ついた私たち。
みんなが口々に感想を述べていました。
「そういえば俺、ビニールハウスんとこでいやな感じしたっちゃけど」
私がいうと、霊感のある女の子(足が震えたドライバーの彼女)が、
「うん。みんなが怖がったらいかんと思っていわんやったけど、
あそこにおったよ。女の人」
……たしかに、聞かなくてよかった。
喉が渇いた私たちは店の中へ。
誰かが、ずっと気になっていたことを口にしました。
「あん人たちがいいよった『犬鳴村』って、ほんとにあるっちゃっか?」
店員に聞いてみると、若い店員の顔色が変わりました。
「もう行かんほうがいいですよ。危ないですよ」
もちろん、そんな顔をされたら行く気にはなれません。
私たちは、明るくなり始めた道を地元へと引き返していきました。
まことしやかに囁かれる犬鳴村の場所とは違うようですが、
後ろからついてきていたあの人たちはどういうつもりで
「犬鳴村に向かっている」などといったのでしょう。
もしかしたら、私たちの乗った車を路肩に落とす気だったのでしょうか。
謎です。
それと、後日談ですが、当日使用した車の
カーステレオが誤作動を繰り返すようになってしまいました。
二台とも。