投稿者:雷神の眷族さん
今は昔、自分がまだ20代半ば過ぎの血気盛んな頃。
友人数人(男女とりまぜ、好きだった娘もいた。)で
心霊スポットを訪ね回っていた。未だ時効になっていない、
とんでもない憑霊現象や物質化現象に週一ぐらいの割ででくわしていた。
中でも、すでに時効と思われる事件をいくつか御紹介しようと思う。
残暑が厳しい年であった。
9月下旬、まだまだ日中は暑い日差しでうだるよう。
海へ行こう。花火もって。
だれがいいだしたのか、その日季節遅れの
納涼花火大会をとりおこなうことになった。
もちろん、なんどか物質化が目撃できたトンネルを通っていくことになるのだが。
2台の車に分乗したわれわれはかのトンネルにさしかかって、
無線で盛んにやりとりしていた。
(携帯などはじめから存在しなかった。)
「右手前方、物質化。女性と思われる。確認できるか?どうぞ」
「了解、確認できた。その後方男性確認。見えるか?どうぞ」
こんなやりとり、見た人はさぞや驚いたろう。
その日トンネルを出るまでに出たのはこの2体のみ、
しかも、われわれの半数は見えなかった。
海岸で花火、さんざん騒いでいるとき、海岸の空気がさーっと変わった。
何か来る。霊感0の自分でさえ身構えた。
いちばん霊感の強い女の子が悲鳴をあげた。
「にげて!」海が、浪が変なうねりをしている。
人が泳ぎ寄せてくるような、おかしい白波がたっている。
ひとり、またひとり、次々と白い人の形をしたものたちが砂浜にあがってくる。
どうやら、見える人たちにはもっとはっきりした人の姿が見えているようだ。
懸命に、砂浜を走り、車に飛び乗って、一目散。
ところが、霊感少女の様子がおかしい。
「ついてきてる。にげられない。」
「どうしよう、このこがこういうときってやばいよ。」
霊感少女の友人が言い出した。
「どうしたらいいか訊いて。」
自分は一番年長だったので、
平静を装って、(内心ビビリまくり)指示する。
「鳥居を、鳥居をくぐって。」
「神社ならどこでもいいのか?」
「神社による。場所によってはやばいのが寄ってる。」
実は、すぐ近くに神社があるのを自分は知っていた。
先行車のハンドルを持っていた自分は、後続と打ち合わせ、
そこへ向かうべく、左折、100M程で鳥居が見えた。
「くぐるぞーっ!」
「待って、そんなところにいっちゃだめーっ」
自分は急ブレーキ、後続は何とかハンドルで車体を横滑りさせて停車。
すぐに降りてこないのはさすがというべきか。
「あれ、見て」霊感少女が指した鳥居の中は、
自分の目には白い人や動物、わけのわからないなにか、
がぐちゃぐちゃと渦を巻いているものだった。
「あれに巻き込まれたら永久に出られない。早く引き返して。」
われわれに異議はなかった。
この晩に限らず、なにか得体の知れないものとのカーチェイスは
お手の物だったわれわれが、首尾よく神社を見つけて、
ついでにお祓いまでうけて無事家路についたのは
深夜でなく新聞がすでに配られた早朝であった。