投稿者:メガバスさん
私の父は趣味と実益を兼ねて夏場は鮎や川カニ(モクズカニ)漁をしていました。
私も夏休み期間中でしたので良く漁を手伝いに行きました。
漁は夕方日暮れ前に川に着き鮎網やカニ籠を仕掛けた後、
夕食を取り仮眠して真夜中の0時あたりから網や籠を上げて行きます。
漁は大抵父の友人数名で行い、全員ウエットスーツに身を固め
腰には黄色のベルトを閉めていました。
私「何で黄色のベルトをしめるの?」
父「溺れたとき助けやすいのと、仲間を識別するためじゃ」
私「仲間って・・僕たちしかいないじゃん?」
父「そのうちわかる・・」
私「?」
父「これだけは覚えておけ。黄色のベルト以外には付いて行くな!」
私「・・・・わかった・・」
このときは父が何で言ったのか判りませんでしたが直ぐ後、
思い知らされる事が起こりました。
鮎網は大勢で一度に捕獲し一時頃には終了しました。
一同は川上のキャンプに戻り後は当番制で1時間置きに
一人で川に下りカニ籠のカニを回収し餌を入れかれるのです。
私の番が回ってきました。ウエットスーツを着て
黄色のベルトを締めスタスタと川へ降りて行きました。
その夜は新月の晩で良くカニが入っていました。
5-6籠の餌を入れ替えキャンプに戻ろうとしたしたところ、
ふと背後に視線を感じました。
良く見ると黒っぽい服を着た男です。
しきりにに手招きをします。
「オヤジの仲間か・びっくりさせるなよ・・」
私はカニの詰まった袋を担いで男の後について行きました。
新月の上、鬱蒼とした林の中なので男の後姿しか見えません。
おかしな事に黄色のベルトはしていなくて凄く足が速いのです。
いつも私の懐中電灯をてらす範囲の先をスタスタと歩いて行きます。
「おかしい・・道も違うし・・」
しかも木の根っこがある悪路なのに頭を全く動かさず
懐中電灯も持たずにズンズン進んで行きます。
「やべーーー」
一目散で来た道を引き返しキャンプに戻りました。
案の定 全員寝ています。
翌日、昨晩の道を偵察に行ってビックリしました。
そこは・・
いきなり崖になっておりその先は青々と水をたたえた
淵になっていました。
父「わしらの漁期はお盆前後じゃからいろんな者が出てくる。
おまえ・・命拾いしたのう・・」