投稿者:BMWさん
怖いというより不思議な話シリーズ第二弾です。
俺が小学校くらいの頃は、北九州市内でも停電が頻発していました。
そんなある土曜の夜、当時放映中だった「仮面ライダーX」を家族全員で観ていました。
怪人とゴッドの戦闘員に囲まれた神敬介がまさに
セットアップ(変身)する瞬間、突然の停電。
「あああああああああ、TVがぁ」
俺と弟は口々に停電を罵りました。
「そんなにライダー、観たいかい?」
懐中電灯を探して来た父親が、俺達に言いました。
「観たい!」
俺と弟は、即答しました。
「じゃあ、」
と言いながら父親はテーブルのライターのフリント・ホイールを弾きました。
Jiith
という音と共に炎が灯りました。
「やったああ!」
灯ったのはライターの炎ばかりではなく同じタイミングで、
なんと家中の電気が復旧したのでした。
「すごおおい、おとうさん!」
俺と弟はその行為自体を不思議とは思わず、単純に喜びTVを観ました。
「ああああああああ、またあああ」
暫くすると、また停電。
「おとうさぁん、」
再び父親がライターを点火、同時に電気が復活。
そんなことがドリフターズの8時だよ!全員集合が始まるまでに数回続きました。
流石に不思議に思った俺は、次の停電のタイミングで
自分でやってみたいと言いました。
「やってごらん」
父親は優しく言って、俺にライターを渡しました。
期待通りの停電。
多少緊張しながらライターを点火する俺。
Jiith
「あはっはあはは、おにいちゃん、だめやん」
弟の無邪気な笑い声の中、俺の動作で停電が復帰することは、
とうとうありませんでした。
「なんで?おとうさん??」
懐中電灯の光に浮かぶ父親にライターを差し出す俺。
「なんだろうなあ、偶然だよ」
そう言いながら父親がライターを灯すと、果たして、TVから爆笑の声が。
「なんでええええ?」
「偶然だよ」
父親はそれ以上話しては、くれませんでした。
「おかあさん、なんで?」
「さあ、お母さんにも、分からないわ」
母親も復帰した灯りの中で、ただ笑ってそう言うだけでした。
年月が過ぎ、高校生になった俺は友人達と、
夏休みの怖い話大会を催しました。
友人宅でのひとしきりの話が終わった瞬間、久しぶりの停電が。
持っていてはいけないハズのライターを握り直して、
俺は友人に停電の思い出を語りました。
そして点火。
やはり停電は復活しませんでした。
俺は明け方帰宅して、出勤前の父親にその話をしましたが、
「ははは、良く覚えてるなあ。それより、
朝帰りするなら、一言行って出掛けろよ」
そう言うだけでした。
20年以上経った現在までに何度か真相を聞き出そうとしましたが、
いまだに「偶然だよ」との返答しかもらえていません。
超能力などがあるとは思えない我が父親に関する不思議な思い出です。
いつか、真相を話して欲しいと思っています。