白い犬

怖い話

白い犬

投稿者:横ねこさん

皆さんは、近い未来に自分の身に降りかかるであろう出来事を
予測された事などあるでしょうか?

しかも、全くの他人から・・・

あれは、大学卒業を控えた3月の初め。
卒業後の進路もマチマチで、頻繁には会えなくなるであろう
友人6人で小旅行を計画しました。
といっても、就職先の研修を控えた子、
又遠く離れた実家に戻らなければならない子もいた為、

近場でという事になり、結局一泊で伊豆高原に行くことになったのです。
住んでいる場所もバラバラだったので、
当日一人を除き東京駅のホームで待ち合わせたのですが、
そこで取りとめのない話をしていた私たちの前に、
ある一人の男性がやって来ました。

「あんたたち、伊豆高原に行くんだろ。行かない方がいい。」

とだけ告げてホームの反対側に去っていきました。

突然の事に呆気にとられた私たちでしたが、よく考えると変なのです。
私たちは、途中で合流しなければならない友人もいた為、
電車を乗り継いで目的地に向かう事になっていました。
目的地へ着くまでの間には有名な観光地もあり、
その時私たちはこの旅行とは全く関係のない話をしていたのです。

なぜ、あの男性に私たちの行き先がわかったのでしょう?

何だか嫌な感じを受けながらも、なるたけその事を考えないようにしていたので、

目的地に着く頃には皆すっかりさっきの男性の事は忘れていました。
その日は、一緒に行った友人のお父さんのつてで、
ある地方自治体の厚生施設に泊まる事になっていました。

(仮にY荘とします)

Y荘に行くには、駅からバスに乗らなければなりません。
丁度ロータリーに留まっていたバスに乗り込み、
ふと窓から外を見ると一匹の白い犬が目に入りました。

バスが発車するとその白い犬も後をついて来るのです。
ちょっと気にはなったのですが、やがてバスもスピードを上げ、
その犬の姿もいつしか見えなくなっていました。

けれども、目的地に着き、バスから降りた私の目に信じられないものが入ってきました。

そうです。
さっきの白い犬が少し離れた低木の陰からこちらを見ているのです。

気付いたのは私一人のようでした。
皆を怖がらせるのもどうかと思ったので、そのまま逃げるように
Y荘の中にすべり込みました。

その晩の事。
これまでの学生生活、これから先のこと、
いろいろな話に花が咲いていました。

すると、隣りの部屋からも賑やかな男子学生数人の声が聞こえてきます。

「あ~、自分たちと同じで盛り上がってるね~!」
などと話していたのですが、段々夜も更けて、
明日の予定などを考えそろそろ休もうという事になりました。

それからしばらく経った後も隣りの部屋は変わらず賑やかです。

何とか眠ろうとした私たちですが、あまりの騒々しさに休む事ができず、

「もう少し静かにしてもらおう!」と話していた矢先のこと。
隣りの部屋のドアの開く音がして、私たちの部屋の方に向かって
歩く音が聞こえました。

その音は私たちの部屋の前で止まり、ドアを強くノックし始めたのです。

「まずい、色々文句言ってたの聞こえちゃったのかな?」
ちょっと怖くなった私たちは、じっとドアを見つめていました。
やがて諦めたのか、その人は部屋に戻ったようでした。
ホッと胸を撫で下ろしたその時、一人の子の様子がおかしいのに気付きました。
何かグッタリしているのです。
どうやら熱があるようでした。
「さっきまで、あんなに元気だったのに・・・」

隣りの部屋は相も変わらずです。
その子の熱はどんどん上がり、「ちょっとまずい!」と思った私たちは
意を決して隣りの部屋に抗議に行く事にしました。

こちらには病人がいるのです。
思い切ってドアを開け、Nちゃんと廊下に出たところ、
辺りは嘘のように静まり返っていました。

「あれ?おかしいね・・。」

一応両隣の部屋を見てみたのですが、騒いでいる様子は伺えません。

?と思いながらも、とにかくTちゃんの家族に連絡を取らねばという事で、
管理人さんに訳を話し電話でTちゃんの様子を伝えると、
朝一番でこちらに向かうとのことでした。

結局、その晩は皆あまり眠れず、Tちゃんは朝一番で帰っていきました。
朝ご飯を食べられる状態になかった私たちですが、
そのうちお腹も空き、近くのお店で軽く食事をしようと外に出ました。

外はあいにくの雨。

店に入ると窓側の席に案内されました。
一枚ガラスの(上から下まで全てガラス張り)足元を見たIちゃんが
「あっ!」と声をあげました。

見るとそこにはまだ死んで間もないカラスの死骸が・・・

一連の騒動ですっかり意気消沈した私たちは、食事もそこそこに店を出ました。

すると、更に追い討ちをかけるようにあの白い犬がいるのです。

もう一刻も早くこの場を去りたい私たちは、走ってY荘まで戻りました。

Y荘に戻ってからあの白い犬の事を話すと、
Nちゃんも気付いていた事がわかりました。
このまま旅行を続ける気にはとてもなれず、私たちも帰ることにして
フロントで宿泊料金を支払っていた時の事。

後から来る人が、夕べの私たちのような思いをしては気の毒だと思ったので、

あの学生たちの騒ぎについて少し注意をしました。

すると、意外な答えが返ってきたのです。

「昨日は2階には、お客さんたちだけだよ!」

一体どういうことでしょう・・・
確かに6人全員が、ドアをノックする音を聞いているのです。
そして、学生の声も・・・

そそくさとY荘を後にし、皆黙ったまま駅に向かいました。
駅に降り立った私の目に映ったのは、ここに到着した時と同じ
木の下にいるあの白い犬でした。

Tちゃんは、その後3日間熱に苦しんだものの、元気を取り戻し、

私たちの身にもあれから別段変わった事は起こっていません。
あの東京駅であった男性、それからあの白い犬は
私たちになにを伝えたかったのでしょう・・・

今となっては知る由もありません。

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