フェリー(かえり)

怖い話

フェリー(かえり)

投稿者:雷神の眷族さん

今は昔、心霊スポット巡りをしていた頃の話。
往きのフェリーで乗船10分で大パニックに襲われた私達は
その後の50分程の行程を客室でうつむいて過ごしました。
霊感少女だけはけろっとしていましたが、私達はとりあえず
今夜はもう目的は達したし、これ以上は見たく無い!

というのが本音でした。
いつものように賑やかにしたくても話題がからまわりして
話がとぎれてしまい、盛り上がりませんでした。
やがて目的地?に着いた私達はすぐ出る別の会社の便で
帰ることにしました。
フェリーに乗るだけが目的でしたし、夜中のことですので
すぐに乗船できるようだったので

何も考えずに乗ってしまいました。
できれば車から降りたく無かったのですが、規則があるし、
なにかと不便なので客室の隅に固まって座りました。
すぐ横に窓があり、横甲板が通路越しに見えます。
トイレの入り口はすぐ後ろです。

「もっとまん中に行こうよ。」霊感少女が言いました。

「まん中はなんかやだ。」

もう一人の男性、自称ミュージシャンがいいました。

元レディスもトイレに近い方がいい、ということでその場所に決めたんですが、
「ま、みんながよければ、、、」霊感少女の言い方が妙に引っ掛かる私でした。
ただ、なんとなく問い質せない雰囲気でしたのでだまっていました。
あの船じゃないんだ、という安心感で少しずつ
さっきの出来事の分析めいた話題も出始めたとき霊感少女が言いました。

「あの話題は元レディスの家までしないほうがいいよ。」

「なんかあんの?」

「まさかまだ続きがあるって?」

「そういう話しにはそういうもの達が寄って来るってこと。」

みんなはまたしーんとだまってしまいました。

「私、トイレ。」

「じゃ、私も。」
女の子二人が席を立ちました。
私達男二人で雑談していました。

「何?何よう?」

「だいじょうぶだから、落ち着いて!」

トイレで二人が騒いでいます。

「なにかあった?」
私は女子トイレのドアまで行って声をかけてみました。
できれば騒ぎが大きくならないうちに収めなければなりません。

「なんでも無いから席に戻ってて。」

霊感少女が答えました。

私はいわれるまま席に戻って様子を伺っていましたが程なく

霊感少女にかかえられるようにして元レディスが青い顔をして出て来ました。

軽い貧血を起こしたから、と廻りの人に聞こえるように言って席に座らせました。

「どうした?」私は聞きました。
「トイレの窓から白い手が入って来たの。
元レディスには見せないようにって思ったんだけど見ちゃったのね。」

「ごめん、ちょっとパニックっちゃって。もう大丈夫。」
ここまではこない、というので私達はうつむいて
体を寄せあうようにして席に座っていました。

始めにそれに気付いたのは自称ミュージシャンでした。

「なあ、雷人の眷族さん、船の回りを鳥が飛んでない?」

「うん、ずっと飛んでるけど?」

「船の回りを鳥が飛ぶこと自体は夜中でもおかしくないんだけど、、、」

「あ、そうなんだ?おれは変だと思ってた。じゃなんだい?」

「よっく見てみ。」
私は窓の外をさっきから飛び回っている鳥が
私達のいる側に回って来るのを待ちました。

そしてじっくりと見てみました。

「うっく。」

私は立ち上がり、横甲板に出ようとしました。

「あれが気になるんでしょうけど無事に帰りたかったら座ってなさい。
特に雷人の眷族さんはあれから身を守れない人だから
私のそばを離れない方がいい。」

「あれはなんだ?」
「知らない方がいい。できれば見ない方がいい。
まん中の席に移って知らん顔してなさい。」
霊感少女の屈託は実は私に配慮したものでした。
私はしつこくそれについてしりたがったのですが

彼女はまったく教えてくれませんでした。

元レディスの部屋へ落ち着いてみんな朝まで過ごすことにしました。

「フェリーって結構スポットだね。今日は豊作だったね。」

自称ミュージシャンは興奮していました。

「今日はまじやばかったんだよ。」霊感少女はいいました。

「往きはまだ地縛系だったけど帰りはね、へたすると命取られたね。」

彼女は私の方を見ていいました。
「雷人の眷族さん普段まったくみえないでしょ?
だから全然気を使わないでずかずか通ってるの。
感じなきゃそれでも影響ないしね。
でも今日ははっきり見て、感じたでしょう?

そのときは影響をうけるよ。しかも不慣れな分もろに。」
あれがなんであるかはやはり教えてくれませんでした。
逆に聞かれました。

「帰りのあれ、どう見えた?」

「鳥の背中に生首が乗っているような気がして、、、」

「ほぼ正解だね。」

「・・・」



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