投稿者:murasakiさん
以前、けがで入院していたときのことでした。
幽霊とかは信じてなかったけど、あのときは心底震え上がりました。
夜、自分の病室でラジオを聴いていると突然勝手に切れるんです。
何度もONのスイッチを押しているのに、曲が流れてから3秒ぐらいで切れてしまいます。
もういっそ切っておこうとおもい、放っておきました。
すると今度は逆にスイッチが付いたのです。
そして奇妙な人の声が聞こえてきました。
「いたい」…私にはそう聞こえました。
深夜十一時ごろの出来事でした。
翌日、これはちょっと変だなと思い、私は部屋全体を眺めまわしました。
窓の外はいいお天気です。
私は昨夜ラジオを置いてあった場所に、
なんか人の気配がすることに気が付きました。
昨日の晩、私が聴いていたラジオは引き出しつきの棚の上においてあります。
私は棚の一番下にある引き出しをそっと開けました。
「何?これ…」
引き出しの中には、すごく長い髪の毛がたくさん絡まったくしが入っていました。
私はびっくりしてそのフロアのナースステーションに駆け込むと、
対応に出た年配の看護婦さんに昨夜起きた不可解な出来事と、
くしがあった場所を話しました。
看護婦さんは、まるで遠くの物を見るような目で、話し始めました。
「○○さん(わたしです)の前にここに、入院していた患者さんは、
実はガンだったんです。まだお若い方でした」
「じゃあ、亡くなられたんですか」
「ええ。でもガンじゃなくてね、自殺してしまったんです。
綺麗な髪のお嬢さんでした。
でもあの人はガンになってからも、毎日手鏡を見ながら髪をといていました。
髪の毛がくしを動かすたびにぬけおちてすっごい悲惨でした。
でも、いちばん苦しい思いをしたのはもちろんあの人だったのでしょうねえ…
女の子は泣きながら死んでいましたよ。
夜の11時か12時ごろでした。
わたしは彼女の部屋のナースコールが鳴ったので行って見ると、
ベッドが血だらけでした。
女の子は例の棚にひじをついて死んでいました。
手には、くしが握られて足もとにいつも見ていた鏡が落ちていました。
ナースコールは落ちた鏡にあたって鳴ったのでしょう。
そのあと遺族の方がきて彼女の名前を呼んだんです。
すると鼻から血がたくさん流れてきて驚きました。
刃物で動脈を切って亡くなったのに不思議でした」
その人が話したそれが事実だと私は思います。
私はその後、退院し、今は普通の毎日をおくっています。
あの声帯のないような女性の声が今でも忘れられません。