電話番号

怖い話

電話番号

投稿者:はっささん

Rという女の子は、バイク乗りでした。
単車が好きで、400ccのバイクを乗り回していました。
ある時、事故を起こしてしまい、入院する事になりました。
足の骨折で、手術も無事終わり、後は療養だけとなりました。
彼女にとっては初めての入院。
しかも足以外は健康そのもので、昼間も友達や家族が来る以外は、
何もすることがなく寝てばかりの生活。
その夜も彼女は、昼間に寝てしまったせいか、
6人部屋の片隅で本を読んでからかなり遅い時間に電気を消し、
眠りについたそうです。
夢の中。
彼女は誰かと言い争いをしています。
何が原因で、何をそんなに怒っているのか自分でもよくわからないのに
その見知らぬ男の人にRはつかみかかる勢いで攻め立てていたそうです。
お互いに相当な勢いでののしりあい、
ついにその見知らぬ男がRの胸倉をつかんできたそうです。
それでも彼女は(普段はとても控えめな子なのですが)
「なによ!」とその男の手を振り払おうとします。
しかし、男は明らかにRに殺意を抱いている形相で
彼女の胸倉をつかんだ手を離そうとしません。
もみ合っているうちに、男の胸元から定期入れと思われるものが落ちました。
その瞬間。
Rは、病院のベッドの中で汗びっしょりになって目が覚めました。
今でも胸倉をつかまれた感触が残っているようです。
「夢でよかった。」
「何であんなに言い争いをしていたんだろう?」
そして...「あの人は誰だったんだろう?」
そう思い返したとき、彼女の脳裏にあの男が落とした
定期入れが鮮明に蘇りました。
「サエキ」と言う名前。
そして電話番号。
不思議と全ての番号を覚えています。
なぜかRの心の中に「電話をかけてみようかな」と言う気持ちが起きました。
小銭入れまで握り締めましたが、「やっぱり夢の中の話」と言う気持ちと、
「公衆電話まで行くのが(ギプスをしているので)かなり大変」、そして
「馬鹿げてる」と言う気持ちで彼女はそのまま寝る事にしたそうです。
その時、部屋の角に寝ている彼女の向かい側の
ベッドで寝ているおばあさんの方でかすかに動く気配がし、
おばあさんの声が
「その電話番号は、メモをしておかなくていいのかい?」
続いて、横にいる若い奥さんが起き上がった気配がして、
「今日中に電話しておいたほうがいいわよ」
大部屋の中は、当然のことながらカーテンで仕切られており、
就寝時間以降はカーテンを閉める事になっています。
彼女は恐る恐る横のカーテンを開けましたが、
横では若い奥さんの微かな寝息が聞こえてきます。
ベッドから降りて、向かいのおばあさんの様子を伺っても、やはり寝ているようです。
小銭入れを握り締めたまま、ベッドから降りてしまったRは、
「なによ、もう!」
「確かめてやるわよ!」
と半ばヤケになり、廊下を出て、少し離れたところにある
公衆電話に向かいました。

そして、まだ頭に鮮明に焼き付いている電話番号をプッシュしました。
「プルルルル....プルルルル....」
呼び出し音が続きます。
Rの頭の中では「やっぱり馬鹿げてる事をしてる。何やってるんだろ、私?」
と思いかけたその時!
ガチャッ 
「はい。サエキです」
「ヒッ!?」
Rの頭の中は真っ白になり、悲鳴が出たかどうかも
自分ではわかりません。
すると電話の向こうの相手は
「....お前だなぁ! 今からそっちへ行くぞ! 待ってろ!」
そう言って電話を一方的に切られました。
Rは今にも背後に男がやってきそうな気がして、
ギプスの足を無理やり動かし、
自分の部屋に逃げ込み、布団にもぐりこみました。
そして布団から顔も出さず、朝まで震え続けたそうです。
朝が来て、周りのみんながいつもどおりに起きだした頃、
ようやくRは布団から顔を出しました。
そして向かいのおばあさんに、昨夜の事を聞くと、
「あたしは昨夜ぜんぜん起きなかったよ」
と言います。
そして、Rが起きた事を必死に説明したところ、おばあさんは
「今アンタが寝ているベッドに、若い美人いてね。
その彼がバカみたいに嫉妬深い男で、病院に見舞いに来ては、
『医者と浮気しているだろう』とか
『浮気相手の男も見舞いに来てるだろう』
とか彼女を責め立ててねぇ。
ある時彼女が一日だけ退院をして自宅に戻ったときに、
その男はまた彼女を執拗に責め立てて、
挙句の果てに彼女を包丁で刺して、
自分も自殺しちゃったらしいのよねぇ。」
Rは自分の見た夢が、なぜかその彼女と関係がある気がして、
おばあさんに聞きました。
「おばあちゃん、その男って・・・・」
「あぁ、確か
『サエキ』とか言う名前だったかなぁ」

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