山にいた誰か

山にいた誰か 怖い話
山にいた誰か

山にいた誰か

投稿者:永田電磁郎さん


それは私が高校一年生のときの話です。
私の通っていた学校は中高一貫教育の女子校です。
その学校では中学一年と高校一年の夏に八ヶ岳にある
学園寮で合宿をすることになっています。
高校一年生の時の合宿で起きた出来事です。
その日は少しハードな登山に希望者が
挑戦することになっていました。
八ヶ岳でも有名な山に連なる少し低めの山でしたが、
それでも山頂まで近づけば高い木は見当たらなく、
高地に生える低木の木だけとなり、山頂にたどり着くには
大きな岩をのぼらなければなりませんでした。
登山が趣味の父にいわせると上りよりも下りのほうが
気をつけないと恐ろしいのだそうです。
膝にかかる負担が下りのほうが大きくなるため
足を痛めやすい、とのことです。
それでも下り道は気が大きくなり、少々浮かれ気分で
歩いていました。
今思えば大変不謹慎な話ですが、
数年前の日航機事故の犠牲者の中に、
一つ下の学年の生徒がいまして、私は
「あの子がやってくるんじゃないか」などと話していました。
誰もその話に乗ってこなかったところを見ると
その場にいた全員が私のことを失礼な人間だと
思っていたのでしょう。
そのうち歩くことに集中し私も無言になりました。
突然、目の前の木の所に作業着姿の若い男の人が
座っているのが眼に入りました。

山の管理をする人か何か、そんな感じでしたが
その男の人は倒れた木に腰掛け、
笑顔でこちらを見ていました。
と、まもなくその姿は見えなくなりました。
疲れで幻覚でも見たのかもしれません。
その後、酷い靴擦れが出来た私は校長先生と一緒に
タクシーで帰ることになりましたから。
タクシーの運転手がこれまた、とんでもない話を
運転しながら聞かせてくれたのですが
「あのテニスコートの裏にある墓地。この前、土葬したよ」
とのこと。一応1980年代の日本です。
本気なのか冗談なのか…。
その瞬間、当時少々ひねくれていた私は
「だったら、あそこでちゃらちゃらテニスしてる人間は
何も知らないでいるわけか。はは」
などと考えておりました。
(自己弁護の為に書きますと、
今はそれほどひねてはおりません。)
その合宿中に自称”霊感がある”人たちは見えるのなんのと
騒いでいましたが私は山に登る前も後も特に
そのこと以外は何も感じず、
何事もなく無事東京に帰りました。
ところが、家に帰った次の日、台所で母が突然
「M子、お前何拾ってきたの?」
と私に話しかけてきたのです。
何事かと聞くと、後ろから誰かがエプロンを引っ張った…と。
母は普段から色々と見るタイプの人間なので、
さして驚いた様子もなかったのですが。
さて、不謹慎な私は心当たりも複数あるので、
いったいどの人を拾ってきたのか…。

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