福岡県福岡市西区小田
————————————
その昔、小田というところに意地悪な老婆が住んでいました。
近所はもちろん、家族にも嫌われ、病気になった老婆を
手厚く看病するものもいませんでした。
ついに老婆は死んでしまうのですが、村人や家族を怨んだ老婆は
翌日から幽霊となって現われ、
村で暴れまわりました。
村人は困ってお坊さんを呼び、供養しましたが、
老婆は供養の最中に現われ、祭壇を壊しました。
思い余った村人は、京都から高僧を呼び寄せ、
老婆を地獄に落としてもらうために
一字一石塔を作ってもらいました。
その後、老婆の幽霊は現われることはありませんでした。
————————————
大静寺。
死んだ老婆の菩提寺と呼ばれています。
なぜ「だんぐれん」なのかというとこの地域は「段」という地名なのです。
地元の人に聞いて、「だんぐれん」の場所に親切にも案内していただきました。
私が持っていた資料は古くて、今は地域もすっかり変わってしまったそうです。
一字一石塔はどこなのか。
案内してくれたおばあさんは「でゃーぐれん」と言っていました。
この地域にお嫁に来たので「だんぐれん」の伝説はあまり詳しくは知らないとの事でした。
案内されたのは畑の一角でした。
そこには石が転がっていました。
おばあさん「確かここがでゃーぐれんって聞いたけどねぇ」
かつてはこの土地はお寺の土地になっていそうです。
しかも驚く事にたまにこの伝説を聞きつけて見に来られる方がいるそうです。
その時、この近くのおばさんが声を掛けて下さいました。
おばさんは親切にも一字一石塔について知っている人に
電話で聞いて調べてくださいました。
どうやら最初に行った大静寺に一字一石塔を
移したか何かしたそうです。
再び大静寺に戻り、ご住職にお話を聞くと、
一字一石塔は2、3年前に解体してしまったそうです。
お寺で供養をし、石工さんに処分してもらったそうです。
理由を尋ねると、
「あまり気持ちのいいものではないので、
地域の人に頼まれてやった」のだそうです。
非常に残念ですが、この土地自体
もうお寺のものではなく個人の駐車場として使用しているのだとか。
落ちていた石はかつての礎石だったそうです。
撤去前も台風で何度か倒れたりしていて、
かなり風化が進んでいたそうです。
さて、「だんぐれん」ですが「段紅蓮」とも訳せます。
紅蓮というのは地獄をあらわしたりしたようです。
参考文献
ふるさとの伝説 いつまでも伝えたい31話」安川浄生 あらき書店