福岡県某所、車も入れない山の中にそれはあった。
探すのに時間がかかり、あたりはすでに薄暗くなっていた。
沢がすぐそばを通る。
そこにひっそりと祠がある。
この祠は「首なし地蔵」を祀ったものであるという。
中心の服を着たお地蔵様がそうである。
昔、この辺りは山賊や追剥ぎが出ることで有名だった。
長崎から江戸へ向かう商人が山賊に襲われた。
山賊は商人を殺害し、金目の物を盗んだ。
ふと後ろを振り返るとそこにはお地蔵様があった。
山賊は思わず、「おい、地蔵さん。この事は誰にも言うなよ」と言いました。
するとお地蔵様は「私は誰にも言わない。それよりあんたも誰にも言うなよ」
お地蔵様がしゃべったことに驚いた山賊はお地蔵様の首をはねた。
その後、商人の遺族がここに商人を供養するため石碑を建てた。
一年経ち、商人の遺族は再びこの地を訪れ、商人の冥福を祈った。
そこへ一人の男が現れる。
「地蔵様、ひさしぶりだな。俺のこと覚えているか?
一年前ここで商人を殺した山賊だよ。」
このことを聞いていた商人の遺族は刀を抜き、
見事あだ討ちを果たしたのだという。
写真ではフラッシュを焚いているが実際はもっと暗い。
聞こえるのは沢からの水音。
付近には古い墓と思われる石があった。
「天保」の文字があった。
首のない地蔵は全国たくさんある。
これは明治時代に行われた
「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」というものによる。
仏教を廃して神教を広めようとした法律で、
これにより多数の仏像が破壊の憂き目にあった。
ただしここの地蔵は廃仏毀釈によるものではない