投稿者:蓮香さん
1988年夏。
ある会合で別府に出掛けた時のことです。
女性ばかりの団体で、とあるホテルに泊まりましたが
私は夕方から体調を崩し、
食事も摂らずに部屋でベットに横たわっていました。
夜10時ころになってようやく腹痛も治まり、少々小腹が空いてきたので、
タクシーを呼んで近くのラーメン屋に連れて行ってもらいました。
ホテルに戻ったのは11時頃で、
次の日は朝早い出発だったのでベットに潜り込むことにしました。
しばらく目を瞑ってじっとしていましたが、
夕方からずっとウトウトしいたせいかなんだか
寝つかれなくって、私は起き上がりました。
眠れない時は最近会っていない友達に手紙を書くことにしていたので、
早速窓に向かったテーブルに座り
ホテルの便箋で手紙を書き始めました。
しばらく熱中していたのですが、
ふと誰かに見られているような気がして顔を上げました。
すると真正面の窓の外を、作業服を着た
おじさんが通り過ぎようとしていました。
私はレースのカーテンを開けて、
その人をよく見ようと身を乗り出しました。
丁度その時そのおじさんが立ち止まって、こっちを見ました。
こちらからはおじさんの上半身しかみえていませんでしたが、
おじさんは照れ笑いのような顔でひょこんとお辞儀をしました。
私も笑顔で頭を下げ、またカーテンを閉めました。
その時なんだかちょっと変な感じを受けました。
こんな夜中(12時を回っていた)に
窓掃除をしているなんて危険すぎます。
もう一度カーテンを開けて外を窺いましたが、
もうおじさんはいませんでした。
次の日の朝食中、同行者に昨夜の話をしました。
そのうちの一人がやはり 同じおじさんを窓から見ていました。
その話が幹事に伝わり、幹事はチェックアウト時に
フロントに聞いてみたそうです。
しかしフロントは
「そんなことはないでしょう、深夜窓の掃除はしていません。」
と答えたそうです。
ホテルから出る時、私たちが泊まった
建物の横をバスで通り過ぎましたが、
窓の外に手すりもバルコニーもなく、足場も組んでありませんでした。
あのおじさんは一体誰だったのだろう・・・
と今でも思い出します。