投稿者:夢魂さん
私の親父のお話をいたします。
私の親父は地方公務員をしておりまして、
ほぼ3年ごとに異動があり、
この時は出水市の庁舎の方へ異動になっておりました。
親父は鹿児島市内に家を作ったため、
ここから毎朝出水市へ車で出かけておりました。
(離島の時は単身赴任です)
鹿児島市から出水市へ至る方法は、
国道3号線を川内市をかすめて北上する方法と、
3号線の途中から宮之城という町を抜けて
紫尾連山を越えていく方法があります。
国道3号線は都市部を繋いでいるため渋滞も酷く、
私の親父は宮之城町>紫尾>出水市へ抜けるルートを使っておりました。
その日も普通に仕事を終え、出水市から鹿児島市へ帰ろうと
車を走らせていました。
夏場ですと紫尾あたりではまだそんなに暗くならないのですが、
その日は冬場で紫尾の山を上り始める頃には
既に辺りは夜になっていました。
暫くすると問題の紫尾山トンネルが姿を現します。
親父はいつものように、普通にそのトンネルを通ろうとしました。
トンネルも半ばを過ぎた頃、親父はなんとなく違和感を感じました。
違和感はすぐに「なんだか嫌な感じ」に変わり、
ハンドルを握る手にも自然と力が入りました。
なにゆえ力が入ってしまったのかといいますと、
ハンドルから手を離すと、
車がトンネルの壁に向かって自然に切れていくような、
そんな感覚を覚えたから、らしいのです。
親父は最初左側のタイヤが「パンクした」と思ったそうですが、
その左側のドアミラーを何気なしに見てどきっとしました。
女の人が映っていたのだそうです。
しかし、一度もそんな人を追い抜いた覚えはなく、
また紫尾山トンネルの周囲にはこれといった町や集落もないため、
歩行者がトンネル内を歩くというのは珍しいのです。
つまり、歩行者が居るのは逆に物凄く目立つので通り過ぎる場合、
見落すはずがないわけですね。
それがいきなりドアミラーに映ったので、
親父はどきっとしたのでした。
「俺は幽霊なんか信じてねーけど、あんときだけはびっくりしたね」
と親父はこの話を閉めてくれました。
「だってよ、12月なのに、夏服ぽかったんだよ?」