投稿者:匿名希望さん
わたしは、以前イベント会社に勤務していたときの
体験をお話させて頂きます。
それは、ある地方のホールで、化粧品会社の表彰式の
ディレクターを任されたときの事です。
そのホールは、業界では、幽霊がよく出ると有名なところでした。
リハーサルが終了し控え室で休憩をしているときに、
照明をおねがいしている会社の担当の人が、
私に話し掛けてきました。
「ここね、ピンスポットのブースに男の幽霊がでるんですよ。」
ピンスポットとは、丸い明るい照明のことで、
舞台上を自由に照らすように、ちょうど大砲のような形をしており、
それを常にスタッフが操作しディレクターの指示により舞台上を照らすものです。
「ほんま?」と私。
「だって、ほんまに出るから、そのブースには張り紙で
本番中は絶対振り向くな!って書いて貼ってあるんやで。」
と照明担当者。
「なんで、そんなん貼ってたら余計に怖くなるやん。」
と私があらためてきくと、なるほど本番中にびっくりしてしまうと
照明がぶれてしまい舞台が台無しになってしまうから、
あらかじめ警告しているというわけらしいのです。
さて、本番。
順調に進行していよいよ表彰の場面です。
ひとり、ひとり発表され舞台上で表彰状が渡されていきます。
その一人一人にピンスポットが当てられてゆきます。
すると、突然インカム(イベント用の全員が同時に
話ができるトランシーバーみたいなもの)で、
「おまえ、今絶対振り向くなよ!」と絶叫が聞こえました。
ピンスポットの担当の女の子が泣きそうに
「うそ!うそ!」と声が震えているのが分かりました。
私は、そんな馬鹿なと半信半疑でそのピンスポットブースに目をやりました。
すると、そこには、明らかに黒い服を着た男の人が
彼女のすぐ後ろに立っていました。
ちなみにそのピンスポットのブースというのは、ちょうど、
人ひとりが乗れるくらいのバルコニーのような形をしているので、
同時に2人の大人が乗れるようなスペースは断じてありません。
そのピンスポットの担当の女の子は何とか
振り返る事なく仕事をこなしてくれ、イベントは無事成功に終わりました。