投稿者:ちこさん
私がまだ大学3年生だった頃の話です。
北海道のとある酪農系の大学に通ってたんですよ。
ゼミに入りたてで下っ端だった私は、
よく先輩に付き合わされて宿直、兼実験室の片付けをしていました。
私達の実験室はちょうど獣医科の解剖学実験室と
広い庭を挟んで真向かいにありまして、
よく解剖実験を窓際で見かけるなど、
あまり気味の良い場所ではありませんでした。
そんなある夜のこと。
先輩と実験室をいつものように掃除していると、
一人の先輩が『あぁ、桃子が脱走してる』というのです。
窓から外を見ると牛の桃子が庭にいるのが見えました。
(私達は頭部の模様で牛を見分けるのですが・・・)
『きっと牛舎の奴ら、サボってるんだよ』ということで、
第1発見者の先輩Aが、外へ捕まえに行き、
私達は内線で牛舎に脱走を通告。
私:『せんぱーい、桃子、脱走してますよー。ちゃんと見てなきゃ。』
先輩B:(ちょっと確認した後で)
『何行ってるの?桃子ならここにいるよー。』
私:『あれー?じゃぁ、桃子じゃないのかなー?
とりあえず6館の庭に牛がいるんだけど』
先輩B:『全員ここにいるけど・・・・。
見間違いじゃないのー?』
そんな会話の途中で、外へ捕まえに行っていた先輩Aが、
真っ青になって実験室に戻ってきました。
私が脱走事件などなかったという話をしている間も
先輩Aはガタガタ震えながら『首・・・首ッ・・・』とパニックに陥っています。
とりあえずどうにか落ち着かせた後、
話を聞くと庭に出た先輩Aは、牛などどこにもいないことが分かって
おかしいなぁ、と思いながらふっと私達がいる実験室の窓を見たとき、
牛の生首がフワーーッと窓の近くを通り、
中をジーっと眺めて消えたそうです。
その話を聞いた後、実験室の掃除はもちろん中断。
宿直もサボり、みんなで固まって寮へ帰ったのは言うまでもありません。
その後実験室はなるべく昼間に掃除を済ませることにしました。
桃子は今でも健全との事。