神上がり前

怖い話

神上がり前

投稿者:B-HEARTさん

田舎で産まれ育った私にとって「山」は
心の安らぎであり、配送中に嫌な事があると
決まって帰りは三瀬を通ります。
去年11月生憎の雨日和、この大自然が
雪景色に変わる前に心をリフレッシュさせようと思い
唐津から七山村を通り三瀬へと入りました。
美しい景観、湖(ダム?)の畔には別荘が立ち並ぶ、
そんな場所で私は「彼」を拾いました。

トラックを止めハザードを付け、左膝に憑いた
「彼」の声に意識を傾けてみると、一言
「、、流された、、」
と言う、こんな山の中で?
湖に流れ込む川は穏やかで、鉄砲水の犠牲者か?
と思うより先に、この雨にも関わらず出力不足の水量に
考え方の変更を余儀なくされる。
一体何を訴えたいのだろうか。
しばらくして、一つの映像が私の意識に流れてきました。
『母胎』です。
「お前さん水子か!」、私がそう言うと微かに
反応がかえってきました。
「そうか。確かに最近の若者は
好き勝手にセックスして、いざ妊娠って事に成ると
簡単に中絶すればいいと思ってるね。
こんな胎児でも意思はあるというのに。
でもね、全ての若者がそんなバカってワケじゃないから
また産まれ変わっておいでよ、今回はたまたま
運が悪かっただけだからさ。」
そう答えてやると「彼」は左膝から胸の辺りまで
上ってきました。
私は父親(ひと)の温もりを知らないであろう
「彼」を心持ち、強く抱きしめてあげました。

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