投稿者:冷静公務員さん
学生時代の話。
鉄筋4階建の新築アパートに住むことになった。
私が入居した部屋は1階の101号室。
細い市道に面していたこともあり、窓を開けると、
車の走る音や子どもたちの元気な声がよく聞こえていた。
あたりは住宅街だったので、街灯が灯るころにはとても静かになった。
入居した最初の日、引越しの手伝いやらで父が泊っていった。
我々が眠りについてどれくらいたったのか、
「ピンポーン」、玄関のチャイムの音で目を覚ました。
父も起き、共になぜ自分が起きたのかも分からない状況で
ボーッとしていた。
と、またも「ピンポーン」というチャイム。
『ああ、チャイムか』と鈍い思考を巡らせていると、
間髪いれず「ピンポーン」と鳴った。
「やっぱり、1階の道路側はいたずらがあるなぁ。
3回も鳴らしやがって」と父がつぶやいた。
それから3カ月、前期の試験のため徹夜で勉強していた時のこと。
時間は午前3時過ぎだった。
「ピンポーン」
仲良くなったばかりの同じアパートに住む水商売のお姉さんが、
さし入れでも持ってきてくれたのかと思い、
立ちあがろうとすると
「ピンポーン、ピポーン」と鳴った。
「はーい、今いきまーす」と言い、鍵を外し、ドアを開けた。
誰もいない。
「?」と思いつつ、あたりを見渡しても誰もいなかった。
お姉さんの部屋は真っ暗。
彼女でもないようだ。
この日は何事もなく勉強を続け、試験を受けてから眠りについた。
次の日の夜。
またも深夜に勉強していると、昨日とまったく同じことが起きた。
チャイムが鳴ったのである。
また、外に出てみたが誰もいない。
時計を見ると、3時46分だった。
昨日も同じ頃だったような気がする。
なんとなく気味悪い感覚をおぼえた。
二日目の試験を終え、またも深夜の勉強を開始。
ふと、時計を見ると3時40分。好奇心も手伝い、
玄関のすぐそばにある風呂場で「もしや…」という思いで、
チャイムが鳴るのを待った。
デジタル時計が、3時46分になった時、
「ピンポーン」、
やはり来た!
私はそっと風呂場を抜け、
玄関のドアののぞき窓から外をうかがった。
誰もいない。
広角レンズ越しに見えるのは、
街灯に照らし出された外の風景だけ。
私は鍵を外し、ドアも壊れんばかりに勢いよく外に出た!
やはり、誰も、いない。
やや興奮気味だった私が、呆然と立ち尽くしていると、
背後でゆっくりと閉まりかけたドアの向こうから、
ゾッとする音が響いてきた。
「ピンポーン、ピポーン」。
私は、この事件から一カ月としない内にアパートを出た。
このアパートは建てる前は床屋だったのだそうで、
そこのご主人が自殺した経過があることを
大家の息子から聞き出した。
関連があるのかないのか、チャイムの体験から数日後、
生まれて初めて『霊』を見た話は、
また後日、ご連絡申し上げたいと存じます。