投稿者:若鷹さん
一年以上前の話です。
当時私は、コンビニエンスストアでアルバイトをしていました。
バイト同士の仲がよく、私たちは年齢、
性別問わずに遊んでいました。
そしてある日、私、Aちゃん、Kちゃんの三人で
有名な十三佛へと繰り出してしまったのです。
三人のうち、Aちゃんは霊感を持っており、
何かヤバイ状況になりかけたらアドバイスしてもらうつもりでした。
十三佛に到着。
私はなんとなく坂の上まで車で行く気になれず、
路肩に停めて歩こうと二人に提案しました。
車を降りると、いつしか細かい雨が降り始めました。
後から聞いた話なんですが、雨や霧の日というのは、
あまりよくないらしいんですね。
そして三人という奇数人数も。
その日は、よくないことが起きる条件を満たしていたということなのでしょう。
そんなことを知らない私たちは、怖がるKちゃんをなだめつつ
坂を登っていきます。
私を中心に左にKちゃん、右にAちゃんという、
状況が違えばすごくおいしい隊列で歩いていました。
Aちゃんは周囲に目を走らせ、何か見えるか探っています。
反対側のKちゃんは異常に怯え、私の腕にしがみついて震えていました。
そして左手に竹林がある広場へ。
私は奥にあるお堂(洞窟)に向かう気にはなれませんでした。
竹林から、ものすごくいやな空気が伝わってくるのです。
Aちゃんは私以上にその気配を感じ取っていたらしく、
目が合うと彼女は「いるね」と呟きました。
そしてよせばいいのに、私とAちゃんは懐中電灯で
竹林を照らしてしまったのです。
そのまるい光の中、私には真っ青な顔をゆがめた男性のバストアップ。
Aちゃんにはその男性と、髪の長い女性の姿とが見えてしまいました。
息を呑んだ私とAちゃんは、Kちゃんを怖がらせないように
何も言わず引き返すことにしました。
数十メートル歩いたところで、今度はAちゃんの
様子がおかしいことに気付きます。
「やだ。ついてきてる!」
彼女いわく、竹林にいた男女が後ろから
ついてきているそうなのです。
私たちは急いで車に戻りました。
車のフロントはこともあろうにその「男女」のほうに向いていました。
私は狭い道で何度も切り返そうとしますが、Aちゃんは
「だめ!バックして。前に進むたびに近づいてきてる」
と苦しそうに訴えてきました。
体がくっつくほどによりそった男女は、瞬間移動をするかのように
少しずつ迫ってきていたそうです。
仕方なく私は延々とバックで三叉路まで戻り、急いで逃げました。
「もう、大丈夫?」
私が聞くとAちゃんは黙って首を振ります。
それは国道に出ても同じでした。
後部座席に一人で座っていたKちゃんは「体が重い」といい、
助手席のAちゃんは「足首をつかまれてる」といいました。
私も、左半身の感覚がおかしい。
私たちは、人がいるところに行こうとバイト先のコンビニへ向かい、
深夜勤務の二人に助けを求めました。
その頃には私とAちゃんの異変はおさまっていましたが、
Kちゃんは依然として苦しそうです。
事情を話し、その二人と私の男三人でぐったりしている
Kちゃんを事務所に運ぶことにしたのですが、
Kちゃんの体は三人がかりでもまともに運べないほど重くなっていました。
Kちゃんは百五十センチもない小柄な娘です。
「すごい力で押さえられてる」というKちゃんの体を触ってみると、
胸やお腹、背中、太股、腕など体中のいたるところが
手形にへこんでいるのです。
私の手よりも少し小さかったように思います。
なす術のない私たちはKちゃんの父親に連絡を入れ、
とりあえず病院に運んでもらいました。
翌日には、知り合いのお坊さんに御祓いをしてもらったそうです。
お坊さんがいうには、男女の霊の姿は既になく、
それをきっかけにして集まった複数の霊が
彼女の体に憑いていたとのことでした。
私も、そういう能力を持っているI姉さんに車を清めてもらいました。
いまでも、あのときのKちゃんの重さと、
手形にへこんだ彼女の体の感触は忘れられません。
ちなみに私はそれ以来、時々「見える」体質になってしまったようです。
今回の話はこの辺で。
またなにかあったら、お話します。